行雲流水

 前夜元気な声の電話の主は翌朝には死の知らせ、Gゴルフに興じた同期の友は一月後には幽明境を異にし、急ぐかのような後輩らの黄泉への旅立ちなど、まさに諸行無常の感あり▼「若きにもよらず、強きにもよらず、思い懸ぬは死期なり…」、「死は、前より来らず、かねて後ろに迫れり、…覚えずして来る。沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるが如し」(徒然草)▼干潟が沖にあるのを見て安心していると、思いもかけず後ろの方に潮が満ちていて、帰れなくなる。と兼好法師は死期の無常を説いている。諸行またかくのごとしか▼話が飛ぶが、健康アイランド宮古を標榜するこの島々の、産廃問題や不法投棄など、喉に刺さった魚の骨、取り除かねば命にかかわる。それでも、よく見える物はそれなりの対応もできようが、観光地の草むら、沿道へのポイ捨て、ゴルフ場内周辺の空き缶等の散乱、紳士にあるまじき行為。環境破壊「覚えずして来る」はその人々の心に巣くう▼さらに飛ぶが、米・英のイラク戦争は、ほんとに勝利したのであろうか。今だゲリラ的戦火は消えず、地域や宗派のボスらが跋扈する風土に、唐突な自由と民主主義は定着するのか▼アラブの格言「一夜の無政府主義より、数百年にわたる圧制の方がましだ」は、アメリカの言う「解放と自由」が馴染まぬ異物のようにも思える。覇権主義の米国にはそれを知る心のひだなどなさそうだ。破綻「かねて後ろに迫れり」が、その心であらねばよいが。

(2003/07/04 掲載)

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