行雲流水

 十年一昔という。辞書には社会や人事がほぼ10年を1くぎりとして大きく変わることから10年たてばもう昔のことのように感じられることと説明されている。戦後生まれが多数となった国会では「沖縄戦」や広島長崎への「原爆投下」は遠い昔の出来事と見なされてかきな臭い法案が矢継ぎ早に可決されている▼確かに戦後58年。残虐非道な戦禍の実相体験者はもはや少数派である。しかも高齢化している。学徒動員ひめゆり部隊の生還者の1人ひめゆり平和祈念資料館の本村つる館長は沖縄戦証言者の少数化や高齢化によって戦禍の伝承が困難をきわめつつあると憂慮している▼太平洋戦争における怏ォ縄戦揩フ戦没者は23万8000人余。県民の4人に1人は犠牲となり亡くなった。この無念さを風化させず戦没者のみ霊を慰めるとともに恒久平和の誓いを肝に銘じるため沖縄県民は6月23日を『慰霊の日』と定めた▼同日マティダ市民劇場では平良市文化協会主催の「第10回なりとぅゆんみゃ〜く方言大会」が催された。そして開会に先立ち全員起立で戦没者のみ霊に黙祷を捧げた。瞬間立錐の余地もない満席の会場は水を打ったように静まり返った▼聴衆の中には高齢者が多かった。戦争体験がなく伝えようにも伝えがたい戦後世代が国民の総体を占めた時わが国はどこに向かうだろうか▼ムチを伴う市町村合併問題で全国の市町村が対応に埋没し他を顧みる余裕もないその間隙を縫うかのように小泉政権は危うい法案を次々と打ち出している。

(2003/06/27 掲載)

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