行雲流水

 立ち枯れかとまがうほど一葉も残さず冬枯れしていたセンダンもうりずんの時節を迎えると枝のここかしこから一斉に春を芽吹く。そして新芽は若夏に向かって勢いを増し羽状複葉に衣替えしてすがすがしい新緑に生長する▼しかしこの時期センダンは『わが世の春』を謳歌してはおれない。同時期大敵のカミキリムシが群がってくるからである。2年前目大切に育てていた樹齢26年のセンダンの枝葉が目に見えて衰えてきた。丹念に肥料を施したが衰えはとまらなかった▼樹木に詳しい知人は「カミキリムシ幼虫の食害でしょう。この木くずは食べカスです」と告げた。幹にこんもりと盛りあがっていた食べカスを取り除くと小さな穴が3カ所薄暗く奥に続いていた。殺虫液を注ぎ込んで対処したが蘇生しなかった。3カ月後息子の記念木センダンは立ち枯れてしまった▼上野村のユートピアファームに向かう村道のセンダン並木は見事で美しい。その並木の立ち枯れが近年増えてきた。ユートピア農園主の上地さんは心を痛めている。現場からルリボシカミキリムシ2匹を採取犯人はこれですよと答えた▼ご本人「こんなにきれいな虫が!」と仰天。確かに見た目は美しい。3センチくらいの体は円筒形で細長く固くて黒地に不揃いの白い斑点が数カ所。ひげも固く体長の2倍はある▼くせ者はその幼虫。成育期の2年もしくは以上も樹木の材に食い入り孔道をつくって食害する。樹木は健康で美しい姿によって引き立つ。カミキリムシ族は許せない。

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