行雲流水

 草木の新芽が萌えでる「うりずん」の季節は、緑の濃さを増して「若夏」に移って行く。生きとし生けるものに活気がみなぎるこの季節は、門出や新しい出会いの季節であるとともに別れを惜しむときでもある▼新聞紙上には各官庁等の人事異動が掲載され、市民の関心を呼ぶ。その1つ、学校、なかでも県立学校の人事が最近よく話題になる。地元職員の割合が極端に低くなっており、その影響が危惧されるからである▼新規採用者や他地区からの転入は以前からあって、マンネリになりがちな学校に新鮮な刺激を与え、地区高校教育の発展に大きく寄与してきたし、そのことは今でも変わらない。要はバランスの問題である。地域に腰をすえ、地域にねざして、父母の教育要求に応える各年代層の教師も学校には必要である▼先日、ある高校の退職激励会があった。退職者たちの語る言葉には、多くの生徒たちの人生にかかわることのできた喜びがあり、顔は誇らかに輝いていた。また、彼らを激励する言葉には、笑いあり、涙ありで、それぞれが個性を十分に発揮して、努力してきたことの証があった。幸せな彼らのよき後継者を育てることは圏域の重要な課題である▼人にとって故郷とは、何よりも「人」である。学校を巣立って、各地で活躍している人々にとっても、肉親や友人とともに、教師が「故郷」であったら、とても嬉しいことだ▼時代のキーワードは「原点回帰」である。地域に光を当てることである。地域の期待に応えうる教育を、地域に確立することである。

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