行雲流水

 この瞬間にも、罪のない人々の上に爆弾が炸裂しているのだろうか。湾岸戦争ではイラクのクウェート侵攻に対して、国連の決議に基づいて制裁が加えられた。今度の場合、明らかに事情が異なる▼フランス政府の「戦争反対」に対する国民の支持率は92%である。米国においてでさえ、例えばニューヨーク・タイムスは書いている「米国自身が攻撃を受けたわけでもなく、米中枢同時テロとイラクの関係を示す証拠もない中での国連・安保理を無視した攻撃である」。国連事務総長も「安保理の枠外で一方的行動に出ることは国連憲章に合致しないと警告した▼国際連合は、2つの世界大戦の反省を踏まえて、平和とすべての人民の経済的、社会的発達を促進するためにつくられた機構である。憲章は、主権平等と自決の原則をうたいあげ、武力行使を原則禁止している。侵略に対する自衛と、国連安保理が決定する集団的措置は例外だが、そのいずれにもこの戦争は該当しない▼戦争反対の国際世論に抗して、なぜ米国はこの戦争に固執するのだろうか。「石油利権」が言われているし、自国だけの判断で先制攻撃も辞さない一国主義の新保守主義者の台頭も指摘されている。政府と議会と軍需産業の癒着の恐るべき実態については広瀬隆著『アメリカの巨大軍需産業』に詳しい▼力の支配する弱肉強食の世界では、人類が営々と築いてきた諸価値が踏み潰されていく▼「戦争を避けるという目的は、他のすべてに優先されなければならない」(ラッセル・アインシュタイン宣言)。

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