行雲流水

 先月の17日、伊良部高校では東京演劇集団「風」による「星の王子さま」の公演が行われた。文化庁の「本物の舞台芸術体験事業」の一環として、実現したものである。サン=テグジュペリ作『星の王子さま』はメッセージ性に富んだ気品ある作品で、世界中の人々から愛されている▼無邪気で愛らしい王子は、童心そのものである。王子は6つの小さな星をめぐり、いろいろな大人に会う。権力を誇示する王、拍手されることが好きなうぬぼれ男、呑み助、所有物を数えてばかりの実業屋、命令に従うだけの点燈夫、情報を集めるだけの地理学者▼こんな奇妙な人々だから、人と人との真の結びつきが出来ない。7番目の星・地球で、王子「砂漠って寂しいね」、ヘビ「人間たちの所へ行ったってやっぱり淋しいさ」、キツネ「人間のやつ、いまじゃ、友達なんか持てやしないんだ」▼友達になったキツネは王子に秘密を教える「心で見なくちゃ、物ごとは見えないってことさ。肝心なことは、目には見えないってことさ」。そこには、大人への批判と同時に、物質文明に対する批判が込められている▼感想文に生徒たちは書いている。一番大切なこと、友情のことを改めて考えた。本物の演技に圧倒された。舞台セットが素敵。舞台裏のスタッフの苦労も分かった。団員と一緒に準備や片付け、合唱にも参加して、思い出になった▼飛行士と王子が砂漠でやっと見つけた水は「友情」を象徴する。満天の星の中に目では見えない王子の小さな星をイメージする事は、楽しいことだ。