行雲流水

 シュリー夫人の「フランケンシュタイン」は1818年の作で、死者の骨から怪物人間をつくる話だが、いつの時代もロボット等人造人間への夢は尽きぬようだ▼ところで、新興宗教団体がクローン人間を誕生させたなどと、マスコミを賑わしているが、クローン動物には死産など、先天異常が多発する傾向があり、クローン羊ドリーの死(肺疾患のため安楽死)で、一層暗い陰を落とした▼クローン技術とは卵子の核を抜き取り、代わりに体細胞の核を挿入して受精卵と同じ状況をつくり、発生を促す方法である▼細胞核中の染色体の末端にあるテロメアは細胞分裂を繰り返す度に短くなる。即ちテロメアが短いほど細胞は老化していると言える。逆にテロメアを一定の長さに保てば細胞の老化は防げることになり、事実そのような研究も進んでいる▼6歳の雌羊の細胞核からつくられたドリーは、1歳の時点で老化の兆候がみられたという。しかし他のクローン動物ではテロメアは短縮していないとの報告もあり、老化とクローンの因果関係は明確ではないようだ▼話が飛ぶが、ニューヨーク州立大のE・ウインマー博士はポリオ(小児麻痺)ウイルスの合成に成功したという。一般にウイルスは、自身のDNAやRNA(リボ核酸)を宿主となる細胞に挿入し、その内部で増殖するが、単独では増殖や代謝ができず、このため生物とはいいがたいという。しかしウイルスの合成はDNAやRNAの合成を意味し、近未来、人造生物の誕生を匂わせる。