行雲流水

 宮古農林高等学校の前里和洋先生と環境工学科・環境班の生徒たちの地道な研究が結実、脚光を浴びていることは大変喜ばしい▼研究プロジェクトの概要は次のようなものである。宮古島の土はカルシウムを多く含んでいる。このカルシウムと化学肥料中のリン酸が反応して作物に吸収されないリン酸カルシウムとして土壌蓄積されている。これに、リン溶解菌をバガスや糖蜜、木材チップに加えて発酵させ、その中で生成される有機酸がリン酸を遊離させ、作物に吸収される状態にする、というもので、製品は「Bio―P」(バイオ・リン)の名で、特殊肥料として登録された▼これは有機肥料であるし、また、リン酸の利用率が高まると、窒素、リン酸、カリのバランス上、窒素化学肥料の余分な施肥が必要でなくなり、硝酸性窒素による地下水汚染も軽減されることになる▼土壌から純粋なかたちで菌を分離、その中から有機酸生成能力の高い菌を選抜出来たことが、研究成功のポイントと言える。その何段階にもわたる過程の高度な専門的知識と技能には驚かされる。日本学術振興から奨励研究の指定を受けたことも故なきことではない▼生徒たちは、サンプルを収集し、方法を学び、実験し、農家と連携して追跡調査を行った。「プロジェクトに参加したことで、将来環境を大切にする人に育つと嬉しい」と前里先生は語る。生徒たちの「世界水フォーラム」への出場は、教育的成果の象徴といえる▼この快挙は、環境保全と物質循環型農業の推進に大きく寄与することになろう。