行雲流水

 専売特許であった筈の沖縄の長寿問題がにわかにかまびすしい。特に男性の平均寿命が全国平均を下回り、都道府県別の順位で26位、意外な結果を突き付けられて慌てふためいている▼降って湧いたように店頭の自然食品、健康食品に群がる珍事ありとの報道、いかにも場当たり的で、心が寒い。スローライフ、スローフードは、まさに沖縄の心であり文化であった筈だ。押し寄せるファーストフードに寄り切られたのであろうか▼どこで食べても同じ味、化学調味料等を多量に使うであろう濃くて分かりやすい味の、ファーストフードやインスタント食品、その味になじんだ舌は、長寿食といわれる伝統的な沖縄の味を取り戻せるであろうか▼生活習慣病の増加が指摘され、中高年男性の自殺者や離婚率が異常に高いストレス社会、家庭崩壊が、ひいては食文化を衰退させる根本要因であろう▼スローフード運動はイタリアが発祥の地だが、今や全国的に、その地域における有り様を追い求めており、沖縄は伝統食にあぐらをかき、忍び寄る危機に無用心であったようだ。長寿県沖縄・食文化が観光の目玉でもあるのだが▼親の意識や食の在り方が子どもに伝わるという基本的な姿を呼び戻さねばならないと思う。だが、口で言うほど容易でなく「価値観の転換を伴う強い意志と、ある種の精神的ゆとりがなければ実現できない。沖縄にとってスローフード、スローライフとは何なのかを改めて問わねばならない」と識者はいう。