行雲流水

 一触即発の様相を濃くしつつあるイラク情勢。加えて緊迫度を増してきた北朝鮮問題。対岸どころか地球そのものが刻一刻と焦(きな)臭い硝煙のにおいに覆われている。そして連日報道される経済失政・不況・倒産・失業・自殺の連鎖▼こんな沈鬱な時世ゆえ既報の「宮古馬誕生」の紹介紙面は清々しく心にしみた。母馬の邪気のない仔馬を優しく見やる慈愛に満ちた目は神々しかった。苛立たしくこぶしを振りかざす超大国大統領にも優しさと慈愛届けと思う▼島尻さんの宮古馬牧場(狩俣・西平安名崎在)では昨年十月に続く二頭目の嬉しい仔馬誕生。宮古馬の二世誕生がこのように関心大きく報道されるのは日本在来馬八馬種の中の貴重な一種だからである▼ちなみに日本在来馬とは北海道和種・木曽馬・御崎馬・対州馬・トカラ馬・与那国馬・野間馬・宮古馬八種の総称。宮古馬は現在頭数が最も少ない『稀少種』として国は農林水産省家畜改良センター十勝牧場で増殖に努めている▼ここ宮古島では一九八〇年六市町村長結束して『宮古馬保存会』を結成。新城明久琉球大学教授の尽力を得て増殖の機運を確かなものにした▼琉球王朝時代は武士の乗用や江戸幕府・中国への献上品御用馬として生産された。明治の中期以降陸軍は軍馬生産の国策として改良に乗り出したが宮古では受け入れられず未改良のまま『在来種』として残ったと記録にはある。粗食と重労働に耐え小柄ながら耐久力にもすぐれ悪路でも蹄鉄を必要としない宮古馬は愛しい。