行雲流水

  朝のNHK「連続テレビ小説」が楽しい。若々しく、瞳がきらきら輝いていた「さくら」に続いて、今は「まんてん」のひたむきさがいい。彼女の父親は理由も告げずに行方不明になっていたが、実は、家を出たのは沖縄へ日食を見に行くためだった。ありえない事ではない▼以前、翔南高校に小沼達哉という若い教師がいた。彼はバンコクへ皆既日食を観測に行ったが、年休願いに次のようなことを書いた文書を添付した。小学生の頃から天文に興味があり、中学校では天文部、高校では天文を主とする写真部に属していた。高校3年生の時、ハレー彗星が地球に近づいてきたため、学校を休んでサイパンへ観測に行った。今年1995年10月24日、イランからフィリピンにかけて皆既日食が観測できる。この機会を逃がすと、モンゴルで見られる1997年まで待たねばならない。さらに、専攻が世穴E史であるし、この機会に外国の文化や生活習慣にも触れたい▼なお、1987年9月23日、沖縄では金環日食が観測されたはずだ、と彼は書いている。まんてんの父親は、この日、太陽がまるで指輪のように見える金環日食を見に沖縄へ行ったのではないか▼その後、小沼教諭は、学園祭で、日食の神秘的なドラマを見事な写真で紹介した。旺盛な好奇心がいい。生徒との感動の共有も素晴らしい▼歩き始めたばかりの幼児は、母親に見守られている事を確かめると、未知の世界へ関心を広げ、より遠くへ行きたがる▼知的好奇心こそが、ヒトを進化させてきたに違いない。