行雲流水

 おおみそかの夕刻、迎え、迎えられた人々が連れだって空港を出た時、その先に、7色の円弧を描いて、虹が華麗に立っていた。揃って新年を迎える人々を祝福するかのようであった▼古来、虹は「希望」と「憧憬」の表象であり、赦しと平和と秩序のしるしである(創世記)。「和解」と「祝福」、「再生」の象徴である。誰もが、新しい年が、平和で幸せな年になることを願い、新年を迎える▼一つの絵図を描いてみた。中央に大きな円がある。地球である。天上では星々がきらめき、月と太陽が輝いている。宇宙の中で、幾多の偶然が重なってできたたぐいまれな存在である。円の中には山や海、森や川があって、花が咲き、虫が鳴いている。田畑が拓かれ、道が伸びている。神を信ずる者と信じない者、踊る人と歌わない人がいる。喜びも悲しみも、悩み苦しみも愛ゆえだから、2つの極点には「人」、そして「愛」を置こう▼円がかざしているものは、長い歴史の中で、人類の叡智が求め続けた友愛と連帯による共生・共栄である。すべての場所で、すべての人が人間らしい尊厳を持って生きられる世界である▼偏狭と独善、暴力と武力が円をねじ曲げる。煽られる憎悪、巨大権益が広げる「正義」の名による「地獄」、つくられる戦争、報復の応酬、格差を生むシステム。この戦争と貧困、砂漠化と、その原因となるものにおもりをつけて円から切り離さねばならない▼重心に「生命の尊重」のあるおもりの構築こそが課題である。虹は丸い円の上にたち続けるだろうか。