【 記者の目 】

 議員間の思惑交差し混迷/本筋は「条例」よりも「人選」

助役2人制導入

 開会中の宮古島市議会(友利恵一議長)十二月定例会は、伊志嶺亮市長が提案した「助役二人制」の条例案で激しい論戦が展開され、議員間でも賛否両論となっている。野党は、議会前から同案提案に激しく反発し、伊志嶺市長に強い不満をぶつけている。一方の与党も同案について、見解は微妙に一致していない。選挙後にいきなり出てきた「助役二人制」だが、実際はその後に提案される「人選案」が見え隠れしていることが現状を招いているようだ。
 ◇状況
 同案に対して野党は反対。与党内部は賛否に分かれている。しかし、賛否の意向は条例案そのものよりも、助役二人制に伴う人選案が議員間の不満を強めている。
 現在、提案が有力視されている前県議会議員の坂井民二氏と下地学氏について、特に野党内部は坂井氏に対する反発が強いようだ。十一月に行われた合併に伴う市長と市議の同時選挙で衆議院議員の下地幹郎氏が伊志嶺氏支持となり、坂井氏もそれに同調。実質は保守分裂の選挙となったことから、野党(保守系)では坂井氏の助役就任に危機感を募らせている。
 また、下地学氏については、前平良市助役で伊志嶺氏を支えてきた実績もあるが、与党内部も同氏の支持について微妙に温度差があることから、すでに水面下で動き出しているこの人選が大きく影響しているようだ。
 ◇賛否
 議員の勢力図が分散し、思惑が交差していることが同案を混迷に導いている。実際は条例案そのものよりも人選をめぐる攻防戦が与野党、会派間で展開されている。
 なぜ、助役が二人必要なのかという議論については、反対する野党の主張にも現状は市民の支持を受けるには若干、説得力に欠ける。
 これまで、野党の主張は「財政が厳しい状況で助役を二人とすることは財政健全化を目的とする合併の目的に反している」、「合併に伴う諸課題の対応は二人の助役に任せないで市長がやるべき」などだ。
 この主張も十分に理解できるが、いつしか野党の言い分は伊志嶺市長の平良市長時代の市政運営に対する不満になるなど論点が定まらない部分もある。
 これに対して、同案に賛成する賛成議員の意見は「宮古島市の新市建設計画における収支計画の中では三役の報酬額は盛り込まれ、平成二十七年度までは三役を廃止しないとなっている。また、五市町村合併で諸課題も山積しており、行政をスムーズに進めるためにも助役を二人とする市長の姿勢は十分に理解できる」との見解だ。
 しかし、厳しい財政状況の中では、同計画案を基本に、さらなる歳出抑制策も必要との指摘も成り立つ。
 ◇権限
 助役案件は旧平良市でも難航するケースが多かった。なぜ、難航するのか? それは助役の職務にある。最も代表的なのが公共工事における建設業者指名の審査委員会の委員長を助役が務めることから、その人選は市長が提案し、さらに議員間の思惑のバランスがとれた人物が就任するというケースが通例だ。
 また、職員の人事案件についても、影響力を持つことから、助役人事は難航しがちだ。
 さらに、五市町村が合併して生まれた宮古島市においてその助役の権限は旧平良市の助役職よりも行政面、政治面でさらに大きな「力」を持つことも影響している。
 ◇なぜ?
 この問題は、きょう十六日から始まる一般質問でも激しい論戦となる見込みだ。人選を見据えた議論よりも「なぜ助役二人制」なのかの議論で市民の理解を得るだけの理由を賛成、反対の両派が示すべきである。市民目線でこの問題が議場で議論されることを望みたい。

                                  (垣花尚記者)

 

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