【 記者の目 】

 平良、基礎票の多さ生かす/明暗分かれた上野と下地

宮古島市議選

 十三日に施行された宮古島市議会議員選挙で二十八人の選良が誕生した。今市議選は選挙区の拡大や市長選との同時選など初めてづくしの選挙となり、候補者のみならず有権者も戸惑った。各候補とも従来同様に地縁・血縁を中心とする選挙運動を展開したが、票の流れが読みにくい選挙でもあった。前職をはじめ元職、新人の選挙戦や各地区別の動きを検証する。
 ◇前職の強み生きた選挙
 今回の選挙には旧五市町村の前職三十四人が立候補。地区別の内訳は平良が十八人、城辺が七人、伊良部が四人、下地が二人、上野が三人だった。
 投票の結果、平良は十四人、城辺四人と伊良部は三人が当選した。落選したのは平良が四人、城辺が三人、伊良部と下地が一人だった。
 平良の当選者は、基礎票をしっかりと守ったことが勝因だ。他の地区に比べて基礎票が多いだけに、一定の目減り分を除けば当選ラインに乗せやすい地区でもあった。城辺と伊良部の当選者も基礎票を柱に戦ったが、城辺は四人が涙をのんだ。ここでは革新系候補七人の乱立が敗因と言えるだろう。
 ◇明暗分かれた下地と上野
 有権者数が同規模の下地と上野はくっきりと明暗が分かれた。下地は立候補した前職二人のうち、革新系の伊志嶺亮氏を支持した池間健榮氏が当選し、保守地盤と言われている地域から保守系候補の古波蔵小夜子氏が落選した。出遅れが最も大きな敗因と言えるが公明党の協力を得られなかったことや、川満省三旧下地町長ら保守陣営の取り組みの遅さも大きく影響した。
 一方の上野は前職三人がそろって当選。同地区の有権者数二千二百票余りから考えると大きな得票だ。当選した前職の平良隆氏、新里聡氏、上地博道氏の総得票数は三千二百票以上で同地区の有権者数を超えており、地道な選挙運動で他の地域からもしっかりと得票したことが分かる。
 前職三人全員が当選した上野と、保守系候補一人が落選した下地。同じ保守地盤でも、選挙戦に懸ける取り組みの差が顕著に表れた。
 ◇元職と新人の健闘
 元職は平良二人、城辺一人が立候補し、平良の池間雅昭氏が当選した。旧平良市議会議長の経歴を持つ池間氏は出身地の西原地区を中心に東学区での集票活動も精力的に展開してきたことが実を結んだ。同じ西原から革新系候補として新人・山里雅彦氏が立候補したことは池間氏にとって痛手となったが、切り崩される票を最小限にとどめ、結果として九百五十六票を獲得し返り咲いた。
 その池間氏を苦しめた山里氏は市長選で池間氏とは違う伊志嶺亮氏を支持(池間氏は下地敏彦氏支持)。市長選とのセット戦術で選挙戦を戦い七百二十七票を獲得、当選ラインに滑り込んだ。
 同じ新人で当選した伊良部地区の仲間明典氏は千百九十票を獲得し上位当選。過去に旧伊良部町で行政職を経験し、同町長選挙に挑み、さらには町長リコール運動を中心的に進めたことなどによる知名度の高さを生かした選挙戦で勝ち抜いた。
 その他の新人は基礎票の希薄さから苦戦を強いられたが、若さや政策を前面に打ち出す選挙戦は一定の市民から共感を得た。
 ◇市民の期待
 選挙区の拡大、市長選との同時選など初めてづくしの選挙戦を勝ち抜いた二十八人。十六日の当選証書付与式では下地明氏が二十八人を代表し「市民の期待に応えられるよう頑張りたい」と決意を表明した。
 その市民は本紙取材に対し「市町村合併して議員が少なくなってしまった。小さな部落は誰も見ない」「平良のことばかりが話題になるのではないか」と懸念している。
 言葉通り、特に郡部の議員は大幅に減少した。「議員の目が届かなくなる」という声も理解できる。ただ、市町村合併はスリム化が大前提だ。そうすることで健全な市を建設することが目的にある。
 伊志嶺亮市長を中心とする宮古島市政、そして二十八人の新議員と住民、互いが合併の意義を理解しつつ、新しい宮古島市建設に取り組むことが求められている。

                                  (山下誠記者)

 

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