【 記者の目 】

 両陣営驚きの413票差/保革色薄れ政局不透明

宮古島市長選

 今月十三日に行われた第一回宮古島市長選は旧平良市長の伊志嶺亮氏が旧城辺町助役の下地敏彦氏をわずか四百十三票差で退けて、初代宮古島市長となった。今回選挙は、五市町村が合併して選挙区が拡大し、さらに市議選との同時選挙ということもあり、難しい条件下で行われた。さらに混迷の政局とそれに伴い複雑化した支持構図も加わったことから票読みは難航した。新たな条件、混迷政局の中で行われた今回の宮古島市長選を検証する。
◇ 票差
 今回の結果には、伊志嶺陣営、下地敏彦陣営ともそれぞれ別の意味で驚きを隠せなかった。お互いに当選を確信し、結果を待った。
 同日の午後九時すぎに伊志嶺氏当確が報道された段階で、伊志嶺陣営は三千票以上の差があると確信していた。
 一方の下地陣営は小差ではあるが下地氏の勝利は間違いない、との判断があったことからこの結果に驚きを隠せなかった。
 本紙が実施した世論調査(八日実施)では、伊志嶺氏と下地氏の支持状況は、平良と伊良部で伊志嶺氏がリードし、城辺、下地、上野で下地氏がリードしているとの結果が出た。
 しかし、八日段階で、「まだ投票する候補を決めていない」との回答が約四割となり、今回の四百十三票差はこの四割の動向も大きく影響したようだ。
◇ 世論調査
 本紙が実施した八日現在の世論調査の伊志嶺氏、下地氏の支持状況は全体の三三・四%が伊志嶺氏支持。二八・八%が下地氏支持となり、「その他」と答えたのが三七・七%となっていた。
 地区別では、伊志嶺氏が平良で一〇ポイント、伊良部で二五ポイント下地氏を上回った。下地氏は城辺で二〇ポイント、下地で八ポイント、上野で二四ポイント伊志嶺氏をリードした。また、全体では伊志嶺氏が下地氏を四・六ポイント上回る結果となった。
 しかし、まだ投票する候補を決定していないとする回答が、平良で四五%、城辺で二四%、伊良部で二五%、下地で三三%、上野で二〇%、全体でも四割近くとなっていたことから、選挙戦後半に勢いのあった下地陣営が支持層を広げたとの見方もある。
◇ 保革
 合併前の旧五市町村の首長姿勢は、平良以外が保守系。さらに平良も三年前の保守分裂選挙となった市長選では保守票が約一万一千票、伊志嶺氏支持の革新票が九千票で全体では保守票が上回っていたことから、全体的に見ても宮古島市は保守系候補有利との構図が見てとれる。
 しかし、自民党を離党し九月の衆院選で「自公」に勝利した衆議院議員の下地幹郎氏が「反自公」を掲げて、保革の構図を打ち消しながら伊志嶺氏支持を打ち出したことから、平良を中心とした保守層の一部が伊志嶺氏へと流れていった。
 さらに、伊良部は伊志嶺氏の出身地ということと、動き出しの良さも好転して同氏支持層が広がった。下地陣営も後半激しく巻き返したが、ある程度の伊志嶺氏支持は固まっていたことが調査結果からも見てとれた。
◇ 四百十三票差
 全体的に保守地盤の宮古において、革新系から立候補した伊志嶺氏が四百十三票差の小差で勝利したことは、確実に保守票の一部が伊志嶺氏へと流れたことが要因となっている。
 伊志嶺氏が従来の革新票に加えて、出身地の伊良部で「地元出身を宮古島市長に」との訴えを浸透させたことと、「反自公」の下地幹郎氏の支持を取り付けたことで、保守票の一部が伊志嶺氏支持となったことが、保守地盤宮古島市で伊志嶺氏が下地敏彦氏を四百十三票上回った結果となったようだ。
◇ 今後
 伊志嶺氏勝利で幕を閉じた宮古島市長選だが、今後の政局の先行きは不透明さを増している。伊志嶺氏本人の人気で支えられている感の強い革新支持層も、同氏が政治の場から今後、勇退すると、革新票の足腰は弱体化する可能性もある。
 一方の保守系も今回選挙の敗戦を受け、これまでの分裂の構図を引きずったままでは支持層の不満も強まり、来年の県知事選に向け「自公」「反自公」の動きも今後の展開を左右しそうだ。

                                 (垣花 尚記者)

 

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