【 記者の目 】  民意は反映されたか

自衛隊誘致と合併問題

 「自衛隊を下地島へ」。伊良部町の一部町議たちが緊急動議で下地島空港への自衛隊誘致を可決し、それに連動して合併否決の判断を下す結果となった同町議会。大きな 2つの判断について果たして「民意」は反映されただろうか?両方とも圏域全体に大きな影響を与える問題であり、それを一部の町議だけで判断したことに対する重大さを町議たちは認識しているだろうか?「宮古は 1つ」を目指すと言いながら周囲への影響を顧みない今回の判断に住民たちの反発の「声」は日増しに高まっている。
否めない見切り発車
 同町議会に緊急動議として上がった自衛隊の下地島空港駐屯を要請する決議文には尖閣諸島問題、台湾海峡問題など「国防上の問題」を大義に掲げている。
 しかし、見切り発車であることは否めない。2001年に同町議会が「自衛隊訓練機誘致要請」を全会一致で可決した経緯を見ても、いきなりの展開に国も県もその対応策を見いだせずに現在は立ち消え状態となっている。
 その時も急な動きで住民との話し合いもないままに一部の自衛隊誘致意向をそのまま受け入れた形で町、町議会として一気に県、国へと要請行動を展開した。
 今回の動きもそれによく似ているが「合併」と連動したことが事態を前回以上に大きくしてしまっている。
 また、前回との大きな違いは前回が「全会一致」だったのに対して今回は「九対八」の小差であり、さらには合併を控え他自治体との調整もないままに誘致を可決しただけでなく合併も否決した。これに対する責任の重さを町議たちは感じ、住民は納得しているのだろうか。
■主導権は住民
 現在の伊良部町議会の動向を住民に聞くと最も多く聞かれるのは「分からない」「上(議会、首長)が決めたことだからしょうがない」との意見だ。
 主権在民であるはずの社会でありながら理解できない見解とも感じられるが、この島の現実を最も如実に表した意見とも言える。
 いつしか島の中では主導権が住民から町議や首長に移っていった。町議や首長が住民の代表であっても主権は住民にあるにもかかわらず。
 今回のように伊良部町だけでなく、圏域全体の将来に影響を及ぼすような事項が一部の町議だけで決定され、民意を無視した判断が行われている現実がそれを証明しているとも言えるだろう。
■自衛隊誘致
 「自衛隊が島に基地を設置して国の防衛力を強化し、それに伴う設備投資や消費活動が振興策と連動して圏域全体の活性化にもつながる」との意向が自衛隊誘致の大きな要因となっている。
 この問題に対して「自衛隊」の存在そのものを否定する姿勢でただ「平和」求める意見もあれば、「戦争やテロが多発する世界情勢を見ても、何も対応策を考えないことはきれい事としか言えない。平和な社会を守るための取り組みが必要だ」との意見もある。
 ある住民は「自衛隊の基地はない方が良いに決まっている。しかし、この島の状況からしても今のままでは地域経済も自治体そのものも破たんするだろう。誘致に伴う『振興策』が少しでも地域活性化になるなら考えるべきだ」と述べた。
 どの意見も自分たちが住む島を守り、子供たちに明るい未来を残したいとの意見であることは一致している。しかし、その方法論で食い違う。大切なことはどんな振興策も「平和」が基本にあるということを認識した上で協議すべきだ。
 「安全で安心して住める美しい島」であるための最大の条件は「平和」であることを念頭に、「振興策」「圏域活性化」「国防問題」も含めて、この問題を圏域全体で考えることが今、私たち住民に課題として示されている。
                                  (垣花尚記者)
 

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