【 記者の目 】  04年 県議選を終えて (下)

合併新市へのけん引役に

宮古の政局は「合併選挙」へ

 今回の県議選では「自公対反自公」の政治的対立ばかりが目立ち、政策的な論争はほとんどないままだった。特に宮古郡区は3候補とも農漁業振興が公約の柱となったため、有権者は違う部分での判断を求められた。上野村を除く4町村では「当局勢力対反当局勢力」、「市町村合併賛成派対反対派」の構図が複雑に絡み合った選挙戦となった。
 4町村では2001年から03年までにそれぞれ首長選挙が行われ、当局派と反当局派の構図が出来上がった。また伊良部町、多良間村、下地町(不成立)では市町村合併の是非を問う住民投票が実施され、それぞれの立場で住民グループが構成された。選挙期間中、3候補は支持拡大を図る上で、「市町村合併を積極的に取り上げるのはマイナス」との思惑が働いた。候補者が地域の将来像を訴える場合に、圏域を一体化させる市町村合併の問題は十分に議論すべきだが、それぞれの思惑でトーンダウンした感は否めない。
 特に伊良部町は、赤字再建団体転落の瀬戸際に立っており、自前での来年度予算編成は困難という厳しい状況だ。補助金削減などの国の三位一体改革が進めば、地方財政はひとたまりもない。伊良部町だけでなく他町村も2、3年で財政は破たんしてしまう。喫緊の課題として議論すべきだが、その議論が皆無だった。「政争」に終始し「政策論争」がなかったことは指摘できるだろう。

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 今県議選を終えたことで、宮古の政局は来年の合併新市長選挙、市議会議員選挙へ動き出す。来月は参院選が行われるが、国政選挙に対する関心度は低く、さほどの影響はないものとみられる。今月9日に行われた市町村長会議(多良間村長除く)で、「来年6月の合併を目指す」ことが確認された。新市長選挙は合併から50日以内に行われることになるため、選挙までおよそ1年だ。
 市町村議員には在任特例10カ月を適用することが申し合わされている。特例適用の理由が「各市町村の決算をそれぞれの議会で責任を持って見極める」ことだったため、合併期日が6月になると、出納整理期限の5月末を過ぎるため、すでに各市町村の決算は出そろっている。そうなると特例適用の理由がなくなるため、新市長と新市議会議員の同日選挙の可能性が出てくる。これまでの議員連絡会の協議でも「同日選挙」を主張する意見もあったため、議論の再燃が予想される。
 平良市では2年前の市長選挙、今回の県議選ともに保守側は激しい分裂選挙を強いられた。この2つの選挙で、自らの支持基盤が危うい状況に直面している市議が目立つ。自公対反自公の対立の流れに、自らの後援会組織が巻き込まれ、再構築を余儀なくされている部分が多い。市議の中には「そんなに影響はない」と楽観視する向きもあるが、別の市議は「これから建て直ししなければ…」とあからさまに危機感を表す。今後、合併議論に加えて、「合併選挙」に向けた動きも慌ただしくなりそうだ。

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 今月6日に投開票された第9回県議会議員選挙(15選挙区、定数48)は与党が28議席を獲得、改選前に引き続き、安定多数を維持した。与党内では自民が現職6人が落選して後退。公明は公認3人と会派入り予定の新人3人の計6人となり躍進した。野党側は現状維持の18議席、これまで自公協力路線に圧されてきた退潮ムードを一旦止めた。
 宮古では平良市区で自民現職の坂井民二氏が落選し、革新系新人の奥平一夫氏に議席を明け渡した。宮古郡区では自民現職で公明からも推薦を得た砂川佳一氏が新人2人を退けて再選を果たした。結果として宮古は保守独占に革新側が風穴を開け、保革で分け合う形となった。
 今、宮古は来年の市町村合併に向けて重要な転換期を迎えている。公共事業減少が顕著になる中、圏域最大のプロジェクト伊良部架橋も着工準備に入り、着々と進められている。一方で産業廃棄物処分場火災問題は住民と県の対立が尾を引いたままだ。「住民の声を県政に」、「県政とのパイプ役に」を公約に掲げた宮古選出県議の活動を関心を持って見守りたい。過去4年間、同じ会派でありながら宮古選出県議には露骨な確執があったことは周知の事実。向こう4年間、与野党会派は分かれたが、宮古選出県議として互いに連携を取りながら圏域発展に取り組まなければならないことは指摘するまでもない。


                   (恩川順治記者)  (掲載 2004/06/11)

 

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