【 記者の目 】  04年 県議選を終えて (中)

【 宮古郡区 】

保守対決影ひそめ
有権者にも戸惑い

 現職、砂川佳一氏(60)が新人で同じ保守系の2候補を抑えて再選した宮古郡区。振り返って見れば「後味の悪い」(砂川氏)選挙だった。前回の首長選挙をはじめ、市町村合併問題、各町村における人事、さらには自公路線をめぐる前衆院議員下地幹郎氏との対決まで、候補者の基本政策以前に、互いの感情をぶつけ合う選挙が際立った。郡区内における選挙構図の変化と今後の行方を探る。

【選挙構図の変化】
 宮古郡区の選挙構図が変化した。火付け役となったのが城辺町長の仲間克氏と前衆院議員の下地幹郎氏だ。両氏の確執は中央の自公路線を起点に深まり、自公路線を支持する仲間氏は公明の白保台一衆院議員と接触、結果として下地氏をけん制した。反自公路線の姿勢を打ち出す下地氏は反発し、次第に仲間氏との対決姿勢を明確にしていった。
 両氏の対立は2002年7月の平良市長選で表面化。仲間氏が下地氏の支持する候補とは別の公明推薦の候補を支持、この動きが結果的に同市の保守分裂を招いた。この選挙ではともに敗れたが、両氏の対立は同年8月の城辺町長選でさらに激化した。保守勢力を自陣に付けて4選を目指す仲間氏に対し、総合力に勝る下地氏は革新勢力と手を組んで選挙戦を展開。結果、仲間氏が157票という小差で逃げ切ったものの、この選挙が残した確執はあまりにも大きかった。

【保革対決】
 前回城辺町長選で生まれた構図は今回の県議選でも影響した。同町内の革新勢力が前回町長選と同様に統一候補の擁立を断念し、保守系の候補を推薦。有権者の中には「私はいつも革新に投票するけど誰が革新なのか分からない」という声が聞こえた。革新勢力は革新票をフルに活用しながら保守票を切り崩すという戦術に終始したが、それが末端の有権者まで届いていたかどうかは疑問である。いずれにしても、長く続いてきた保革対決は影をひそめ、複雑な選挙構図が敷かれたということに違いはない。

【保守勢力の強み】
 郡区の保守勢力は近年、強みを増した。5町村の首長はいずれも保守系。さらに町村議会の勢力構成図を見ても保守系が大半を占める。砂川氏はこの組織力を生かした。上野村を除く4町村の首長を自陣に付けた効果は大きく、前衆院議員下地氏の影響力で苦戦を強いられた伊良部町でも最多得票を獲得、城辺町、下地町でも他候補を圧倒、多良間村でも読み通りの集票に成功し再選を勝ち得た。
 前回城辺町長選、下地町長選に続き、今回の県議選でも勝利した保守勢力。その勢いは増すばかりだ。

【革新勢力、反当局派の弱体化】
 革新勢力は弱体化を露呈し続けている。5町村中、保革の色分けが濃い城辺町の革新勢力でさえ統一の候補を擁立することができず、城辺町長選挙に続いて保守系候補を推すという異例の戦術に出たが今回も敗退。ここにきて「リーダーの欠如」が叫ばれている革新勢力の行く末は不透明のままだ。
 その革新勢力と結託して選挙に挑んだ反当局派における組織力の希薄さも際立った。伊良部町では合併反対派を主流とする一派が現職倒しに奮闘。下地町でも前回町長選で現職に挑んだグループの台頭があったが、いずれも保守勢力の強力な組織力に太刀打ちすることはできなかった。

【今後の焦点】
 今後は平良市区と同様に、合併後の首長選挙や市議会議員選挙に焦点が絞られるだろう。保守勢力は連勝の勢いを武器に有利な選挙戦を展開することが予想される。一方の革新勢力、反当局派は組織体制の立て直しが急務だ。
 選挙構図をめぐり候補者のみならず、多くの有権者が戸惑った今回の宮古郡区。「何かすっきりしない選挙だった」と振り返る砂川氏の言葉が最もふさわしい表現だろう。


                     (山下 誠記者)  (掲載 2004/06/10)

 

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