【 記者の目 】  04年 県議選を終えて (上)

【 平良市区 】

保守系 泥仕合のまま自滅

革新系 出遅れも議席奪還

 新人で前平良市議の奥平一夫氏が保守分裂、自公分裂の追い風を受け革新系票をまとめ勝利した県議会議員選挙の平良市区。今回の選挙は、これまで宮古の選挙の中心的役割を果たしてきた建設業者の動きが期間中、ほとんど見られず、特に影響を受ける保守陣営は浮動票へのアプローチと自陣営有利を訴える情報戦略を展開。しかし、内輪もめを露呈するだけで、互いに自滅し合った。保守系から「政治風土の一新」も掲げられた今回選挙。しかし、結果を受けてどれくらいの有権者がそれが実現したと感じただろうか?

【保守系のイメージ戦略】
 分裂した保守系の両陣営が真っ先に取り組んだのは県三役、県選出国会議員を応援に駆け付けさせて「保守本流」を訴える保守支持層への「イメージ戦略」だ。
 「自民党公認と現職」を訴える坂井民二陣営と「公明推薦、自公路線堅持」を訴える嵩原弘陣営で県三役、県選出国会議員の応援誘致合戦は激しく展開された。
 一方で今回選挙ではまったく意味をなさなかったのが「自民党県連公認」だ。「公認候補」という利点が自公分裂でまったく意味をなさないどころか、一部国会議員は今後の国政選挙を見据えて自民党県連公認候補の坂井氏を無視し嵩原陣営のみに応援に駆け付けるなど、国会議員の別の思惑に惑わされ市区の選挙は結局、保守系が議席を失う結果を招いた。

【政治風土の一新】
 市区保守系分裂の起点となるのはこれまで宮古の選挙を牛耳ってきた大手建設業者による建設業者中心の選挙構図だ。
 選挙後の工事発注など利権が絡み合う選挙は常に踏み絵的存在になっていた。それに対抗する保守勢力がまとまり、自公路線も絡み合って市区の保守系は分裂となった。
 この構図で初めて行われたのが2年前の市長選挙だ。今回の県議選同様に保守分裂の三つどもえとなり結局、保守系は自滅した。この時も「宮古の政治を変えよう」が掲げられていた。
 しかし、市長選、今回の県議選とも過去の慣例から離れた新しいスタイルの選挙が行われたかというと疑問だ。両選挙とも大手建設業者に対抗する勢力の出足は市民の草の根的な取り組みが感じられたが、選挙戦後半はこれまでと同様に業者頼みとなり、風土一新を求めた側も古いスタイルの選挙戦を展開。結局、保守系の選挙戦は感情的な泥仕合のまま幕を閉じ、出遅れの指摘された革新系は自滅していく保守陣営を横目に議席を奪還した。

【今後の展開】
 今後、最も注目されるのは保守系の動向だ。このまま主導権争いに終始するのか、それとも一本化を図るか。また、革新系を絡めた新たな枠組みが生まれるのか、この3点に絞られるだろう。
 今回の県議選の結果を見ると、保守系内部の確執は深まった観があり可能性としてはしばらくはこの確執から主導権争いを展開しそうだ。しかし、このままでは今後の選挙も同じ構図の繰り返しが続くことは必至の状況となっている。
 一方の革新系は、今回選挙で混迷を深めた助役案件をめぐる議員間の分裂は解消されたように見えるが流動的な部分も垣間見られる。また、市町村合併した場合の新市市議選では保守地盤の郡区票にもアプローチが必要で、今後どのような取り組みを展開するか注目される。
 保守、革新に関係なく選挙とは住民の代表者を選ぶものであり、主役は候補者ではなく有権者。候補者を取り巻く環境や政治的思惑に有権者が振り回されている現状は選挙の本質をなしているとは言えない。「政治風土の一新」よりも有権者主役の「選挙スタイルの構築」の方が「政治風土の一新」にもつながる。有権者が自ら変わる流れが生まれるか注目したい。

                      (垣花尚記者)  (掲載 2004/06/09)

 

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