【 記者の目 】  宮古地区市町村合併

いまだ見えない方向性/協議大詰め、あいまいさ払しょくを

 宮古地区合併協議の先行きに不透明感が広がり始めた。先月末に行われた21回目の合併協議会の中身は、あいまいな発言を繰り返す兼濱朝徳多良間村長とその姿勢を単純に受け入れる協議会会長の伊志嶺亮平良市長という構図で、結局「多良間村の動向を六月まで見守る」という理解に苦しむ内容でまとまった。協議が大詰めを迎えているとは思えない今回の判断に「首長、議員らの認識のなさにはあきれる」「この協議会はいったん解散すべき」など、合併推進派の一部委員からは厳しい意見が出始めている。

 ■住民投票が生みだしたもの
 住民投票が行われた3自治体では伊良部町、多良間村の両議会が「合併せず」の投票結果とは逆の判断を下したことで両自治体ともねじれの現象を引き起こし、首長、議員のリコール運動にまで発展した。
 住民投票が成立しなかった下地町では最終的な判断は議会に委ねられたが、議員の合併に対する賛否はきっ抗、結局「合併推進」となった。「合併反対」の議員から出る意見は首をかしげたくなるようなものばかりが目立った。
 結局、3自治体の住民投票は住民の意向が示されたというよりも、各自治体の問題点ばかりが表面化するものとなった。

 ■兼濱多良間村長の責任
 兼濱村長は、先月末の協議会の席で議員リコールの問題が決着していないことを説明し「離脱はしないが協議会に従う」と理解しがたい見解を示した。
 最も合併の判断が難しいのは多良間村であろうということは当初から言われていた。だからこそ村長のリーダーシップが必要だったのだが、兼濱村長は6市町村長の中で最もそれが欠如していたと言えよう。
 常に「住民の意向を尊重する」方針を掲げ自らは何の態度も示せなかった。その結果、住民投票でもこれまでの村長選挙同様に島を二分し村民は互いの確執を深めた。また、投票結果に議会が反対の結論を出すなど村長のあいまいな姿勢は各方面に波及した。
 これまでの兼濱村長のあいまいな姿勢が合併協議会にも多大な影響を与え続けていることは事実であり、その責任は重い。

 ■伊志嶺会長の問題点
 兼濱村長の曖昧な姿勢が指摘される一方で、それに協議会がほんろうされ続けていることも問題だ。
 これまでも各種判断を先送りし続けてきた経緯のある伊志嶺会長が、協議会の舵取り役として、その役割をこなしているとは言い難い。
 結局、これまでもイニシアチブをとって協議会を進められなかった伊志嶺会長の姿勢が、兼濱村長のあいまいな態度を助長させた部分もある。明確な方向性が示せない伊志嶺会長の協議会におけるリーダーシップの欠如が現状を招いた観が強い。

 ■求められる建設的な議論
 住民が未来を託した代表者たちの話し合いの場でもある協議会は「合併する」「合併しない」に関わらず建設的な意見を出し合い、それを集約して現実と理想のバランスをとったより良い方向性を示すことが求められていた。
 合併は「義務」ではなく自治体として存続する上での「1つの手段」。手段は「計画」とそれを実行する行政、代表者らの「手腕」がカギを握る。最近の協議会の状況を見て、この「手腕」に疑問を感じている一部協議会メンバーから今、「協議会を解散、合併はせず」の意見が出ることも十分に理解できる。
 今後は中途半端な「合併ありき」の協議よりもむしろ、考えを白紙に戻し「合併とは」を真剣に話し合うことが重要なのかもしれない。

                      (垣花尚記者)  (掲載 2004/04/05)

 

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