【 記者の目 】 イラク戦争に思う (下)

世界のみんなで平和を

黙っていると戦争防げない

なぜ米英は攻撃を始めたか
 2001年9月11日の米同時多発テロ。ニューヨークの世界貿易センターツインビルの崩壊などで約3000人の犠牲者が出た。瞬時の大惨劇に世界中がテロの恐怖に襲われた。これを教訓として、米国のブッシュ大統領は反テロと、大量破壊兵器のテロリストへの拡散阻止を最重要課題に掲げた。イラクと北朝鮮、イランを悪の枢軸国とし、昨年の中間選挙ではイラクの脅威を繰り返し強調して支持を集め、予想を覆す歴史的勝利を共和党にもたらした。「ブッシュ・ドクトリン」では脅威に対する「先制攻撃戦略」を唱えている。イラクを放置すれば核や生物化学兵器がテロ集団の手に渡る恐れがあるとの認識の下にである。
 テロは決して許されるものではない。しかし、イラクがテロリストと関係しているかは不明確であった。また、世界第2位の石油埋蔵量を持つイラクに対する攻撃は、石油を狙ってのものとの見方もある。ブッシュ政権が国連安保理での合意を得ず、単独行動で武力行使に踏み切ったことは歴史上に残る厳然たる事実だ。

日本政府は世論に反して戦争支持
 米英は武力行使の根拠を、湾岸戦争で多国籍軍に武力行使を認めた国連決議678、大量破壊兵器廃棄を停戦条件に定めた687、イラクに「最後の機会」を与えた1441に置いた。日本もこの見解を支持した。しかし国際社会の解釈は割れた。テレビ報道によると、アナン国連事務総長は「安保理の合意なき武力行使は正当性を疑われる」とした。米英が査察による武装解除の成否を見極めずに実力行使に踏み切ったのは、新決議採択を求めてきた外交とも矛盾している。日本は「新たな決議が望ましい」と主張してきたが、日米同盟を優先し直ちに米英を支持した。
 日本の世論の8割が武力行使反対という中で、小泉首相は「世論に従って政治をすると、間違う場合もある」と述べ、世論に反する決定を下した。これを衆院予算委員会の集中審議でも繰り返している。

二度と戦争を起こしてはならない
 国際連合憲章は、加盟国の主権平等、国家の不可侵を基礎としている。米英のイラク攻撃は主権国家に対する軍事侵攻となり国際法違反の疑いがある。他国を敵視することは、暴発を生む。我が国は唯一の被爆国で戦争の惨禍は世界の中でも一番よく知っている。そしてわが国は悲惨な戦争の反省から、平和憲法を持ち、平和主義と民主主義、国際協調主義を根幹においている。国際問題は実力行使でなく、話し合いで解決するのが基本原則でなければらならない。その基本原則をどこまでも貫徹すべきだと考える。国連憲章前文は各国が「善良な隣人として互いに平和に生活する」ことをうたっている。国家関係はあくまでも「相互理解」が肝要である。
 沖縄戦を体験した平良友助さんは「戦後58年、沖縄はいまだに戦争の爪痕が残る。不発弾、遺骨収集もまだまだ続く。戦争の爪痕は100年、200年と長く残る。沖縄では一家全滅もあったりした。気の毒で考えられない。命の尊さはいくら言っても言い尽くせない」と強調する。
 自分の命、幸福追求が大事なように他者にとってもそれは同じく大事なこと。世界の人々が地上から戦争を無くすために手を結び声をあげねばならない。黙っていると戦争を容認することになる。自分さえよければいいとの考えでは全体は良くならないし、全体が良くならないでは1人の本当の幸福もない。

                  (編集局・川満幸弘)  (掲載 2003/04/13)

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