□検証・下地町長「冷遇」発言

kisya021006-1.jpg (7808 バイト)▽「差別発言」に認識薄く
 大きな衝撃を与えた川満省三下地町長の「冷遇」発言。自治体を預かる最高責任者の地方自治の原則を大きく逸脱した、あってはならない発言に対し、町議会は全員協議会で「辞職勧告決議案」の検討を含め、今月10日に開会予定の臨時議会までに方針を決めたいと申し合わせている。しかし内々の協議はあるものの議員間に温度差があり、はっきりとした方針決定には至っていない。「執行部のチェック」は議会の大きな役割であり、どのような方針を打ち出すのか、町民だけでなく、内外からの注目度は高い。一連の背景を検証する。
                
▽議会も反応の鈍さ露呈
 一連の流れの中で議会の反応の鈍さが目立つ。発端となった9月18日の町議会9月定例会一般質問。「冷遇するのか」との問いに町長が「職員に対してはないが、業者に対してはする」と答えたが、この時の議員の反応が鈍すぎる。「差別的な暴言」を議場でされながらも、声を発する議員はなく、まるで当然のことのように受け止めていた。
 議員がようやく問題視したのは翌日の報道を受けてから。しかしまだこの時も「冷遇」を問題として捉えるのではなく、前段の「選挙は戦争。命を取るか取られるか…云々」についてだけ。町長も同様な認識だった。この日に至っても町長は全員協議会とインタビューで冷遇の意味を問われ「指名しないということ。ほかの市町村でもやっている」と淡々と説明している。
 その翌日の最終本会議の日に「感情に走りすぎた」と弁明しているが、「感情に走りすぎたのは『戦争』部分だけ」と認識していたことを証明してしまっている。議員も同様で、『戦争』部分の発言削除の際、異議を唱える声はなかった。
 町長がようやく「冷遇」について触れたのは、弁明後の休憩中。しかも一部議員から強い指摘を受けたからだ。選挙で自らに反対した業者を「指名しない」と公言することが、どれほど重大な意味を持つことか、分かっていなかったようだ。
 『選挙は戦争』という文言が議場における「不穏当発言」に当たるかは、それぞれの見解に委ねるにしても、住民の一部と関係を結ばないという意味を持つ「冷遇」を認める発言は、明らかに自治体の長として「差別的な暴言」。指摘を受けて発言を撤回したにせよ道義的責任は免れない。
 「すべての国民は法の下で平等」(憲法14条)であり、今回の発言は選挙によって制裁を加えるということであり、「選挙の自由妨害」(公選法225条)にも通ずる。選挙後に支持・不支持で業者が「色分け」されることは一般的に見られがちだが、それを公の場で認め、差別的扱いを公言することは前代未聞だ。
 12人の議員は与野党の明確な線引きはないものの、28年ぶりに決選投票となった8月の町長選挙を境に勢力は二分されている。今回の町長発言を強く問題視する議員と、弁明・発言削除ですでに決着していると主張する議員とで、温度差がある。あいまいなまま事態を長引かせることは、議会に対する不信感を抱かせる。早急に対応策を取りまとめ、住民に提示すべきだ。(山里勝美記者)

写真説明=全員協議会で弁明する川満町長(9月20日)=町議会委員会室

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