どうする!海洋ごみ 

環境ネットワークの構想も
 

漂着ごみ 毎年、北風が吹く十一月頃から海浜を覆っていく漂着ごみ。ペットボトルやブイ、瓶、中性洗剤やシャンプーの空容器など自然に相反する物ばかり。それもハングル文字や中国語、メイドイン〇〇といった海洋ごみがほとんど。観光立島を標榜する島にとってこれほど迷惑な話はない。ところが、その答えもみつからないまま、三月頃には毎年大掛かりな清掃活動が展開されている。先日も池間漁協婦人部が島の北海岸に漂着した黒色廃油ボールを回収除去する作業を行っているが、これもどこから流れ着いたかその回遊ルートはわかっていない。今、こうした海洋ごみは島国日本においても国際問題として注目されているが、これといった手立ては見つかっていない。といって、放っておける問題でもなく、今、島でできることは何なのか関係者に話を聞いた。(佐渡山政子)

砂浜に、人為的にぶちまけられたような漂着ごみ=高野海岸

 久しぶりに訪れた高野海岸で目にしたものは、砂浜に打ち上げられたごみのオンパレード。一瞬、言葉を失う。人為的に撒かれたといっても不思議ではないほどの量だ。オフシーズンで、人影のない砂浜に佇むこと三十分、観光らしき男女が二人やってきて呆れ顔で引き返して行った。気になって北海岸を巡見することにする。浦底海岸、新城海岸、クマザ海岸、一様に色とりどりの砂浜だ。高野漁港で会った漁師に話を聞く。「ごみの量は一晩でも変わるよ。今、掃除したって浮きや流木、飲み物の空容器が次から次と流れつく。どうしたもんかね」と諦め顔で話した。防波堤のある砂浜に吹きだまるごみのやま=浦底海岸人影のない新城海岸も色とりどりのごみが散乱していた

前泊勇栄さん
(県宮古支庁、土木建築課課長)

前泊勇栄さん

 先日も、池間島のカギンミ海岸に廃油ボールが漂着しているというので、島の人たちの呼びかけでお手伝いをしてきたが、毎年今頃は北風に乗ってやってくる海洋ごみに頭を痛めています。といって、頻繁に清掃する予算も組まれていない。
 年に一度、八月の海岸愛護月間に大掛かりな一斉清掃を行うが、その他は住民の呼びかけに何とか応えるようにしています。
 ただ、このままだと毎年同じことの繰り返しなので、島を網羅した海岸環境ネットワークができないか、思案中です。
 石垣にはもう既にできている。行政も市民も含めた形で取り組めたら海浜の環境は随分と変わるだろうと思います。それにはまず、住民の働きかけ大切、自分たちの海浜だという意識を強くもつことだと思います。

柴田邦子さん
(針灸師、サンゴ礁ガイド)

柴田邦子さん

  二年前、環境省の任命で島の環境モニターを務めました。その中で、一番気になったのが海洋ごみでした。冬は北風に乗って、夏は台風で様々な物が漂着する。昔の漂着物はロマンがあった。例えば、椰子の実や自然の流木など、気持ちが和むが、今のごみは逆に気持ちを逆撫でする。裸電球やペットボトル、魚網、この前はプラスチックの材料になるといわれるペレットを見つけました。透明の小さな破片で、魚たちがこうした物を間違って食べ危険に晒されているようです。
 今、海洋に捨てたアジアのごみが周辺の島々を汚しているとしたら、これは大きな国際問題だと思う。海浜汚染のみならず、海の生き物たちにも影響を与えることは必至だからです。こうしたことを、モニターのレポートとして月刊「環境」に掲載してもらったが、少しでもアジア諸国がこの問題に目を向けてくれることを期待しています。

中尾忠作さん
(宮古青年会議所、専務理事)

 宮古JCは、平成十七年から「美ぎ島オトーリ」と称し、島の清掃美化活動を展開している。その年の十月には、沖縄クリーン建機(金城民夫代表)さんからビーチクリーナーをお借りして前浜の清掃を行いました。この機械は、ローラー方式で砂浜のごみを回収するもので、この機械が島に一機あれば、かなり重宝するだろうと思います。行政と相談して委託契約で買い入れられたらという構想もあります。そうでもしない限り、浜の清掃は追いつかない状況です。
 「美ぎ島オトーリ」作戦は毎月、地域を巡って清掃活動を行なうというもので、最初の年は実践しましたが、外の団体でもこうした活動が定着してきたようですので、一様の啓蒙にはなったかと思っています。
 これからは、他の団体とも協力して年に二、三回は活動を続けていきたいと思います。

砂川次郎さん
(次郎工業代表)

 昨年十月から、粉砕減容機を導入して、ペットボトルのチップ化を試みています。これは、NPO法人オーガニック沖縄(本社・東京)代表・金内祐二さんの機械提供で行っているが、今後規模拡大して島の環境保全に寄与していけたらと考えています。
 現在は週二回、稼動していますが、量が増えていけば機械も大型化し稼働率も高まります。これまで捨てていたペットボトルをリサイクル材料として換金することができます。
 海浜に捨てられているペットボトルもラベルを剥ぎ取ってキャップを取り、持ってきていただけたら十分に活用できます。これまで、クリーンセンターで圧縮して置いて邪魔者扱いだった物が、有効に活用できる訳ですから一石二鳥だと思います。


 まとめ 

 海洋ごみの存在は、いつからというはっきりした年代はわからないが、おそらくアジア諸国の経済発展による「おまけ」ということが云えるだろうか。廃棄されたごみが船上からか、島からか、そのルートははっきりしないが、根底に環境へ対するモラルの問題があるようだ。国際問題として取り上げられることがベターだが、ただ解決を待つだけではなく、今、市民ができることを考えていかなければならない。
 調べてみて島でもいろんな動きがあることが分かった。海浜の管理は、その状況によって行政の管轄がそれぞれ違う。だといって、押し付けあうのでなく、前泊課長のいう「環境ネットワーク」を早急に立ち上げ、取り組むことも大事。併せて、住民の島を愛する姿勢が大きなカギとなろう。

 



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