サトウキビ畑に囲まれた一軒の民家から、ベースとドラムの重低音が響く。ここはライブハウスか?と思い周囲を見渡すが、音は民家の一角から漏れていた。「大恵ミュージック企画・恵バンド」。演奏者と後援者、総勢二十人の仲間である。十六年前の創立当時からのリーダー、狩俣恵俊さんの名前から一字取り命名された恵バンド。個々に何らかの形で音楽に携わってきた同郷の友人同士が、狩俣さんの呼び掛けで集まり結成された。
地域の祭りにも積極的に参加し、交流も深めている=宮古島リハビリ温泉病院 |
太鼓でリズムを取る仲間さん。練習は深夜に及ぶことも |
バンド結成当初、練習場所を確保することが重要な課題となった。集会所を借りるか、農機具小屋で行うか―。練習は個々で重ねてきたが、全員で音を合わせる場所がなく、メンバーたちの気持ちばかりが膨らんだ。
そんな中、鉄鋼建築業に就いていた狩俣さんが、自宅の一角を改造することを決意。仕事の合間を見て作業を進め、程なくすべて手作りのスタジオが完成した。
恵バンドの活動は主に病院への慰問や、地域の祭りのステージでのライブなど。その他、依頼があればどこへでも出掛けて行く。
九月七日に行われた宮古島リハビリ温泉病院(奥原典一理事長)の納涼祭。普段、民謡や演歌を聞くことが多いお年寄りたちの前での演奏は、立ち上がり踊り出す人もいるほど、大盛り上がりを見せた。
また、後継者の育成にも力を入れている。夏の一大イベント、ロック・フェスティバルで準優勝に当たる奨励賞を受賞した高校生バンド「CURSED(カーシッド)」も狩俣さんのスタジオを使って練習に励んだ。惜しくも大賞を逃し沖縄県大会への切符を手にすることはできなかったが、狩俣さんは「ものすごく伸びる素質を持った子どもたち」と絶賛し、来年の大会へ向け指導に当たっている。
恵バンドでドラムを担当する仲間照幸さんはパーカッション(打楽器)一筋。特にアルコールが入ると太鼓を離さなくなるほど打楽器を愛する。「十六年間活動をしているけれど、本当に楽しい」と笑みをこぼした。
バンドの演奏に合わせ三線を手にすると思わず笑みがこぼれる |
忘れてはならないのが恵バンドを支える後援会の存在である。三代目の後援会長である友利光徳さんは「歌詞の至る所に出てくる地元地名を聞くと情景が浮かぶ。今後もできる限り支えていきたい」と力強いエールを送る。
恵バンドは十月八日に行われる「なりやまあやぐ大会」に出場する。イムギャーで行われるこの第一回の大会に出場し、ロック調に仕上げたなりやまあやぐを披露する予定だ。メンバーから「まったくロックの想像がつかない」との声も上がるほど、未知の可能性にチャレンジ中だ。
年内にはオリジナルのCDの制作も控えている。恵バンドの今後の活動からますます目が離せない。
バンドメンバー・後援会会員は次の通り。(敬称略)
▽狩俣恵俊(代表)▽金村栄子▽真也よう子▽マンテン清栄▽砂川邦利▽池弥隆▽砂川正人▽中村光男▽下地満雄▽仲間照幸▽下地シゲ美▽砂川勝次▽砂川和夫▽友利光徳(後援会長)
そろいのTシャツを着て記念撮影に収まる恵バンドのメンバーら=城辺砂川にあるスタジオ
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