「どんよりした島にしたくない」
若者音楽事情

若者の思いを音楽で発信
 

 近年、宮古の若者たちがパワフルだ。音楽を通し、自らの島を自らの手で元気付けようと必死だ。野外で聴衆五、六千人を集めたロックフェスティバルを昨年、今年と成功させた実行委員長の平良直也さんは「島の若者たちに、宮古でもこんなことができるんだということを伝えたかった」と話す。平良さんは二十代半ばでUターンしたものの、大人のオトーリしかないナーナー社会にがくぜんとし、若者の輝く島にしたいと、同世代の仲間たちとさまざまなイベントを組んできた。その取り組みは一貫して島の自然をいつまでも美しく保っていきたいという環境保全とも結び付いていた。こうしたイベントに派生して中・高校生たちのバンドグループも増えている。今の大人たちが創り出した社会に疑問符を抱く若者たちが、自分たち流の豊かな世界をつくり出そうと今、奔走する。 (佐渡山政子)
 

ミヤコ・アイランド・ロック・フェスティバル



第2回ロックフェスティバルで大ブレイクの若者たち=6月24日、トゥリバー地区

 昨年、今年と島を揺るがせた大イベント。伊良部島を望むトゥリバー地区で県内外から十組のアーティストが登場、宮古の夏をさらに熱いロックで盛り上げた。島外から二千人のツアーが組まれたが大半が飛行機に乗れず、宮古に入ることができなかったという。平良さんは「結局、宿泊も民宿が満杯状態で、大方が砂山ビーチの駐車場でごろ寝ということになった。また、残念だったのは翌日が日曜日だったにもかかわらず、商店街は休みということで、お金も落せず帰っていった。おそらく、毎年続けていくと思うので、宮古島市全体の問題として考えていけたらと思っている」。
 今年のテーマは「海に優しく 空に優しく 美(か)ぎ島(すま)音楽とECOな祭典」。島の環境保護を目的とした「美ぎ島募金」にも協力した。平良さんは「トゥリバー地区でやったのには意味がある。もちろん、ロケーションも最高だが、あそこは行政がコースタルリゾートにするため埋め立て、何十年もほったらかしてある。本当は、それでいいのかという皮肉も込められている」と話し、今の社会の仕組みに不満をあらわにする。

 楽宴、昨年5月から活動

 平良さんと同年代で音楽仲間の下地学さん(愛称・P―BOO(ピーブー))の活動も見逃せない。八人のメンバーで昨年結成された「Nu fatty(ノーファッテイー)」(何 食べる?)。次々と有名アーティストを招聘(しょうへい)し自然の中でライブを催し音楽ファンを楽しませている。まさに「楽宴」だ。ジャンルもさまざま。ジャズ、ロック、レゲエ、ラテン・フレイバァーなど。下地さんの思いも熱い。「みんな、宮古が好きで帰ってくるのに、なぜか若者の居場所がないという感じ。僕たちもそれで出たり入ったりしたけど、でもこれからの若者たちのためにつなぎ役になろうと思い、いろんな人たちを呼んでいる。やっぱり、島をどんよりしたくないしね」
 楽宴の第一声は、昨年十一月、みやこパラダイスで、アフリカンのサヨコ・オト・ナラバンドとレゲエのHAKASE―sunを呼び盛り上がった。今年五月はレゲエのこだま和文のライブ、七月は袖山ガーデンでジャズの「辛島文雄トリオライブ」があった。そして、九月はビッグなイベントが三つも控えている。十二日は、あらゆるジャンルをウクレレで奏でる今野英明ライブ、二十七日にはジャマイカ生まれのJAH・SHAKA(ジャー・シャカ)が来る。さらに、十月はニュー・ジャズ・サウンドの「indigo jam unit」が来島するなど、島があらゆる音楽のメッカになりそうだ。詳しくは、NU FATTY(平良西里299の7、電話090・6634・3652)まで。


 写真説明・ロックフェスのけん引者・平良さん(左)と樂宴の下地学さん(右)
 

 「いつまでも夢を」見守る育成者たち


 写真説明・ティーンズミュージックフェスティバルを主催するイーウェイブの与那覇さん(右)とスタッフ

 先日、夏休みの最中、ティーンズミュージックフェスティバルがあった。文字通り、十代の中・高校生の音楽グループが那覇での出場権を競い合った。何と十三組が出場、オリジナル曲や有名バンドのコピー曲などを演奏、熱唱した。同フェスティバルは、青少年の健全な音楽活動を目的に一九八七年にスタート、今年で二十回目を迎える。宮古では昨年からの取り組みで今年は五組も増加した。その中で、大賞に選ばれたのが「ロックオブエイジ」(リーダー・石嶺賢司さん)。こうした若手のミュージシャンを育てる大人たちがいる。同大会を主催する音楽の店イーウェイブの与那覇修宏(のぶひろ)さん、練習場所を提供する音楽スタジオのオーナーで雅歌小屋の伊良部将之さん、石嶺さんの母親の法子さん、CD製作者の大熊範彦さんら。
 石嶺賢司さん(高二)をリーダーとするロックオブエイジは、今回、地区代表に選ばれたことから、九月十七日に那覇市で行われる県大会に臨む。毎日、雅歌小屋や他のスタジオで練習に励む。そうした若者たちを陰で支える大人たち。若いときの感性を大事に、夢を持ち続けてほしいとそれぞれの立場で応援する。

 写真説明 下・地区代表に選ばれたロックエイジのメンバー
 

 



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