「イチ、ニイ、サン。イチ、ニイ、サン」−。十二人のこぎ手と艇長、艇指揮の計十四人が心を一つにし、歯を食い縛ってこぎ進めるカッターボート。翔南高校カッター部は、第三十三回九州地区水産系高等学校カッター競技大会で見事優勝し、今月二十六日から愛知県で開催される第八回全国水産・海洋高等学校カッターレース大会への出場を決めた。昨年は惜しくも準優勝だった全国大会。今年こそは悲願の優勝、とばかりに毎夕、パイナガマビーチにはオールに全力を込めるメンバーの姿がある。(砂川拓也)
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九州大会の優勝旗を広げ、笑顔を見せるメンバー=7月13日、鹿児島県枕崎市
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放課後、必死の表情で練習に取り組む部員ら=パイナガマビーチ |
全国大会を目指す部員たちだったが九州大会、出だしは息がそろっていなかった。それでも勝ち上がるごとに練習の成果を発揮し、決勝では大会中最も良いタイムで優勝を果たした。
学校が終わった放課後。日が西に傾き始めるころ、部員たちはパイナガマビーチで練習に励む。長さ四・三b、重さは九`にもなるオールで、海水面をとらえる。五百bを折り返す千bのコースで行われるレースは約六分の勝負。全身の力が込められる両腕は、レースが終わるともうパンパンだ。
なぜ、そんな厳しい競技をできるのか、の問いに、「みんなが分かり合って、一つになったとき良いタイムを出せるのがうれしい」と川満吉幸主将(三年)。全国大会に向けての練習も調子は上々の様子で、「一人ひとりが最後まで力を抜かずにやれば、必ず良い結果が出るはず」と声が弾む。
昨年、準優勝を経験した来間智成君(二年)は翔南高校カッター部を「団結力がある」と一言。「レースのときはタイムのことは考えず、とにかく必死でこぐことだけが頭にある。今年は優勝旗を持って帰れるよう頑張りたい」と静かに語る。
中学まではバスケットボールをしていたという玉川勝君(一年)は、同部を卒業したいとこの勧めでカッター部に入った。「練習は死にそうなぐらいきつい。でもレースに勝てたときは、練習したかいがあったと思える。全国大会がとても楽しみ」と笑顔を見せた。
指導に当たる顧問の前泊光男教諭は「嫌というほど練習しないと。相手がどうとか考えたら勝てない。とにかく自分たちの気持ちの問題」と、ハードなトレーニングを課す。「会場に行けばもう、あとは彼らに任せます。私は大会までの雰囲気を盛り上げるだけ」と、厳しさの中にも温かみのある目には、部員たちへの信頼感があふれていた。 |
全国制覇へ力漕 |
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カッター 長さ九bのボートを十二人のこぎ手と艇長、艇指揮が一体となってタイムを競うマリンスポーツ。艇尾でかじを取るのが艇長で、号令をかけて指揮を執るのが艇指揮。レースに使われるカッターボートはもともと、救命艇として使用された。全長九b。レースは折り返し千bの直線コースで行われる。映画「タイタニック」などでも救助艇・避難艇として登場する。
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