「地域の声」行政に

宮古島市を考える会

 


 市町村合併に伴う地域住民の不安や疑問に応えようと、城辺の自治会長ら有志が今年二月に「宮古島市を考える会」(新城元吉会長)を立ち上げた。市幹部らを招いて行政改革や支所の役割などをテーマに議論を続けている。当初は、地域審議会が設置されるまでの措置だったが「この会合でより具体的な話ができるし、地域住民の声を吸い上げることができる」と新城会長。一市民が活発に意見を言い合える場として、今後も活動を続ける方針だ。(山下誠)

城辺地区の区長らが結成
行革、農業、税金など積極議論



毎月16日に会合を開き積極的な議論を繰り広げている「宮古島市を考える会」のメンバーら=福西公民館

 会発足の経緯は城辺地区の区長会が発端。旧町村部にとって区長の存在と役割は大きく、住民の多くが「区長に聞けば分かる」と自治会活動や情報の伝達などで区長を頼りにしている。そんな区長らに寄せられている住民の声が「合併したら何がどう変わるのか」「農業補助はどうなるの」などだ。これらの素朴な声に応えるにはどうすれば良いか―。各区長が話し合い、出した結論が「宮古島市を考える会」を結成することだった。
 会合は毎月十六日に開催、多いときで自治会長を中心に農業委員など約三十人が出席する。基本的に、地域住民であれば誰でも参加できるオープンな会合スタイルだ。会合には市の幹部や城辺地区在住の行政改革推進委員会委員、環境を考える市民委員会の委員らを招く。そこで飛び出す質問は市民の本音。招かれる人たちとの間で交わされる議論は多方面にわたるが、それぞれが「合併した宮古島市のために何が必要か」を真剣に語り続けている。
 そんな会合を繰り返して成果も表れている。ある区長は「この会合を開催していることで、地域住民の要望に少しずつではあるが応えられるようになっている。会合に参加してくれる市の人たちや委員の皆さんに感謝している」と話した。
 これまでの会合の経緯をみると、一回目の会合では市の行政改革推進委員会の下地一雄副委員長が、福祉保健部を城辺庁舎から平良庁舎に移すよう提言をした背景や狙いなどを説明。二回目は市城辺支所の饒平名建次支所長と主に支所機能や自治会長の役割などについて意見を交換した。三回目は、サトウキビの新価格制度と農業補助金の仕組みや配分方法などが市経済部の宮國泰男部長から報告されている。
 四回目の会合のテーマは市税徴収について。二〇〇五年十月に誕生した宮古島市だが、旧町村の城辺と下地、上野の三地区では合併前は区長らが市税を徴収、延滞金を科さないなど独自の運用を続けていた。財政難の中で徴収率アップを掲げる市だが、合併に伴い区長らによる徴収を撤廃する新たな納税方法の周知は課題の一つ。そんな納税法を一市民が考える、議論に参加するという取り組みは「市民の声をじかに聞ける」と市幹部も高く評価している。
 考える会について新城会長は「自分たちの身近な問題をぶつけていることが大きい。行政が考えることと、地域住民、とりわけ農家の考え方には違いがある。そこの部分を議論し、具体的に話の内容を詰めていく。そのことに意味がある」などと強調。「合併後、新市がどのように変わっていくのか。これからも議論を深めていきたい」と話す言葉に決意を込めた。
 城辺地区の住民が自らのために、市民のために立ち上げた「宮古島市を考える会」は、一市民が肩ひじを張らずに気兼ねなく話せる場として、注目を集めそうだ。新城会長は「このような会が、旧町村部である下地や上野に広がっていけば良いと思う」などと話し、伊志嶺亮市長が掲げる「市民参加型」の市政運営に期待を込めている。

 写真説明・真剣な表情で議論に参加する地域住民ら=福西公民館

「身近な疑問を伝えたい」
新城元吉会長、花城加代子事務局長      「今後も会活動を続けたい」と話す
                                    新城元吉会長(左)と花城加代子事務局長
 「地域住民の間で『合併前の話とは違うではないか』などの疑問が出ているのが現状。そういう疑問を少しずつ解消していくために議論を重ねている」と新城会長。「そこには不満や不安、中には苦情もあるが、そういう思いから自然発生的に考える会ができた」と会発足の経緯を語る。
 過去五回の会合を通して得たことは「住民が身近なことを市の幹部たちに言える。小さな出来事でもすべて拾い上げて行政に伝えられている」と行政幹部とじかに話し合える環境を構築できたことに胸を張った。
 花城加代子事務局長も同じ思いだ。「合併した後に、みんなが考えていることや意見など、旧市町村当時と比べて、どこに持っていけば良いのか分からなかった。その糸口を見つけられた」と会結成の意義を語る。「底辺の意見まで市の幹部の皆さんに伝え、一緒に勉強できるということは大変ありがたいことで、行政の皆さんにも心から感謝している」と身振り手振りを交えて語った。
 新城会長にしても花城事務局長にしても、行政に地域の声、一般住民の声を届けられるという点で考える会の活動そのものを自賛する。「今後も地域の声を直接吸い上げていきたい」と新城会長。花城事務局長は「市町村合併がだめだったということではないんです。むしろ合併して良かったと思えるように、行政の人たちと話し合い、勉強していくことが大切だと思っています」と語る。
 「地域の声を何とか伝えたい」という思いから発足した宮古島市を考える会。今後の活動方針を聞くと「地域の声を吸い上げるだけでなく、今後は要望という形で市民の意見を行政に反映させていきたい」と話した。

 

 



                           <<<美ぎ島netページにもどる