「夢」と「希望」お届け 


 

 約三千冊の本を乗せ、小学校を巡る移動図書館「みらい号」。子供の読書離れをなくそうと一九八八年に生まれ、今年で十七年を迎えた。本と一緒に夢や希望も積んでやって来るみらい号は、子供たちに大人気。昼休みになると、それぞれが好きな本や学級文庫を借りに大勢の児童たちが詰め掛け、とてもにぎやかだ。母親たちのサークルによる読み聞かせや音読を取り入れる学校も増えるなど、「本」「読書」の存在が身近にある中、みらい号が果たす役割は大きい。そんな子供たちに人気のみらい号を紹介する。
  (山里勝美記者)



子供たちに人気の移動図書館「みらい号」。約3000冊の本を積み、
平良地区内の小学校12校を巡回し本を届ける=11月30日、久松小学校

3000冊の本で小学校巡回

 みらい号は子供たちの読書離れをなくし読書熱を高めようと、旧平良市教育委員会の事業として一九八八年八月に誕生した。名前は一般公募した中から選ばれた。現在各校を巡回しているみらい号は二代目。「みらい号U世」として活躍している。宮古島市立平良図書館の担当職員が乗り込み、平良地区内の小学校十二校をそれぞれ月一回のペースで巡回し、子供たちにたくさんの本を届けている。
 みらい号に積む本は子供たちや教材として利用する教諭の要望を受け、選出。平良図書館にある約五万五千冊の中から職員が本を選び出し、よりニーズに応えることができるよう配慮している。
 みらい号では一人四冊までを貸し出し、来月訪れる際に返却するシステムになっている。個人への貸し出しのほか学級文庫としてまとめて数十冊借りることも可能で、クラスの図書委員たちが段ボールいっぱいに借りていくことも多い。 電算化システムを導入しているため、貸し出しはすべてコンピューターで対応。各自が持つ図書カードと本のバーコードを読み込み、誰が何冊借りたかをすべてデータで管理している。
 みらい号がやって来るのは昼休み時間。みらい号のテーマソング「ひょっこりひょうたん島」の曲が流れると待ちわびていた子供たちが集まり、五校時の授業が始まるまでの約四十五分間は小さな図書館がオープンする。
 宮古島市立平良図書館の館長を務める宮古島市教育委員会生涯学習課の下地利幸課長は「こうして長い期間続くのは、それだけ子供たちに人気があるということ。みらい号は名前の通り、子供たちの未来への夢や希望を与える車。月に一度学校にやって来るみらい号を楽しみに待つ子供たちのためにも、これからも続けていきたい」と話し、必要性を強調した。

 写真説明(上)・みらい号の中は小さな図書館。たくさんの本がずらりと並ぶ
 写真説明(下)・貸し出しや返却はすべてコンピューターで管理。誰が何冊借りたかをすべてデータで管理している

 子供の可能性広げたい/みらい号のお兄さん・砂川友作さん

 移動図書館「みらい号」を担当する宮古島市立平良図書館の砂川友作さん(26)は、毎回みらい号に乗り込み小学校を巡っている。「子供たちがうれしそうにやって来る。毎回学校へ行くのが楽しい」と目を輝かせながら本を借りていく子供たちの姿を見るのが喜びだ。
 本を読むのが好きだという砂川さんも小学校のころ、学校にやって来るみらい号T世で本を借りた思い出がある。成長し、今は本を貸し出す立場となった。「小学校時代に借りた本をみらい号で見つけることもある。不思議な気分」と感慨深げ。本を借りる子供たちに当時の自分の姿を重ねることもあるという。
 「子供たちの可能性の幅を広げることができればうれしい」。子供たちの喜ぶ笑顔を見るため、これからも小さなワゴンで本と幸せを運んでいく。

 写真説明・「学校を巡るのが楽しい」と子供たちとの触れ合いを喜ぶ砂川友作さん
 

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