読み聞かせで心の交流を  


南小学校読み聞かせ永話の会 「ピーターパン」

 平良市立南小学校読み聞かせ永話の会「ピーターパン」(与那覇政江会長)は、2005年5月に誕生した。現在は週に1回、授業が始まる前の15分間にボランティアメンバーが各教室で絵本を広げ、物語の楽しさを子供たちと共有している。児童の母親だけでなく、退職後の「おじさん、おばさん」も積極的に参加するなど、層の厚さが特徴だ。子供たちが読書に親しむ機会をつくるだけでなく、地域の大人たちと教室の中の子供たちが心を通わせる貴重な時間を紹介する。(砂川智江記者)



               毎回、お気に入りの一冊を子供たちに読んであげる「ピーターパン」のメンバー=23日、南小学校

絵本がつなぐ地域のきずな

 毎週月曜日。学校の先生たちが集合して職員朝会を行っている時間、教室では物語の世界が広がっている。読み聞かせの時間は 8時20分から35分までの15分間。読み手が腰掛けると、低学年の子供たちは次々と席から立ち上がって読み手の前に陣取り、息づかいが聞こえてきそうなほどの至近距離でお話に引き込まれていく。
 現在、平良市内の小学校では、母親らを中心とした読み聞かせのボランティアグループが活発に活動しており、「ピーターパン」もその1つ。宮古教育事務所のボランティアコーディネーターをしていた島尻郁子さんの呼び掛けで2000年に発足。今年で五年目を迎え、朝の読み聞かせだけでなく、読書月間や平和学習など学校行事にも参加したり、大型紙芝居など手作りの用具を他校のグループに貸し出したりと、活動の幅を広げている。
 絵本の選定は「時間内に読み切れるもの」など、基本的な約束事項の範囲で読み手に一任される。十人十色のカラーが表れるのは、グループ活動の強みだ。メンバーの共通認識として「自分が読んで気に入った作品」、「素直に好きな作品」を選んでいるから、 1冊1冊の面白さがダイレクトに子供たちに伝わっているのだろう。
 一方で、常に子供たちの期待に応えられるよう、月に一度のミーティングも欠かさない。担当クラスの割り当てなど事務的な話し合いが中心となるが、メンバー同士が顔をそろえ、気軽に情報交換をすることは活動を無理なく継続するための秘けつだ。
 与那覇会長は、読み聞かせの魅力を子供たちとの「共感」だという。「必ずしも読み聞かせでなくてもいい。例えばサッカーの応援でも。子供たちが心に強く感じたことを同じ空間で一緒に感じることができれば、互いの距離がぐっと縮まる」。地域の中で子供のポイ捨てを見掛けたら、名前を呼び掛けて注意してあげることができる。卒業生が遅い時間に遊んでいたら「早く帰ろうね」と促すことができる。地域全体による子育ての必要性が叫ばれる中、絵本を通じて教室で築いたきずなは、学校を離れた場所で大きく生きてくるという。愛情あふれる読み聞かせは、子供たちの活字離れを食い止めるだけでなく、地域交流の素地作りにもなっている。

 メンバーは次の通り。(敬称略)。
 ▽会長〓与那覇政江▽照屋盛▽内間徳子▽新城初子▽嵩原信子▽島尻郁子▽平良佳野▽徳嶺安子▽池間智恵子▽前津美幸▽喜久川美由喜▽狩俣聖子▽上田美晴▽宮里優子▽山田実奈子▽木村ひろみ▽吉富文子

 写真説明(上)・子供たちは読み手の前に続々と集まり、物語に熱中する
 写真説明(下)・ カラフルな挿し絵に楽しいせりふ。子供たちは絵本に釘付けだ
心育てる手伝いを/与那覇 政江会長

 二男の小学校入学当時、仕事に追われて子供たちに十分に構ってやれず、子育てに負い目を感じていたという。「家族のために頑張っているつもりだけど、これでいいのかな…」。悩める日々を打破しようと始めたのが、子供たちが通う南小での読み聞かせだった。「悶々とした自分の気持ちを開きたくて」ページをめくり、今では自らの子供のみならず、絵本を通して地域の子供たちにたくさんの愛情を注いでいる。
 「忙しい商売人の親に育てられ、子供のころに絵本を読んでもらった記憶がないんです。だから、自分の子育てを通して絵本の素晴らしさに出会った」と語る表情は、絵本から抜け出た女の子のように生き生きと輝く。読み手が心から楽しんでいるからこそ、子供たちがどんどん物語の世界に引き込まれていくのだろう。「声の大きさなどちょっとした工夫はあるけれど、気持ちは家で子供に読んであげるのと一緒。大勢の目の輝きや『ありがとう』の言葉から、大きなパワーをもらっています」と笑顔を見せる。
 「絵本を通じて、心を育てるお手伝いがしたい」。朝の教室で、児童たちと地域の大人たちとの交流が深まっている。

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