自由な雰囲気が財産 


宮古高校美術部

 創作の喜びを知る生徒たちが集まる、宮古高校の美術部(本村博之顧問、狩俣千恵美部長)。心から好きなことを楽しみ、なおかつ互いの技術を高めようと、日々部活動に励んでいる。 1番の魅力は、先輩と後輩の垣根を越えた、風通しの良い明るい雰囲気。その「気軽さ」は、互いの作品に意見を言い合ったり、困ったときに相談したり、時にはプライベートな悩みを打ち明けたり、苦手教科を教え合ったりとさまざまな関係につながる大切な財産だ。伸び伸びと部活動に励む、美術部員たちを紹介する。    (砂川智江記者)



自由に伸び伸びと部活動を楽しむ宮古高校美術部の部員たち

学年の垣根越えて技術向上を

  「運動部みたいに全員が団結しないと前進しないわけではないけれど、団結しているから互いの向上につながっているんです。部活は、学校で過ごす1日の中で1番好きな時間」。2年生の砂川沙由里さんは、はつらつとした表情で話す。「絵には、描いている人の気持ちが表れる。何となく描けば何ともない仕上がりになるし、気持ちを込めてこだわれば、やっぱり絵がいきいきする」。創作へのモチベーションにつながる「自由な」雰囲気を誇りに思っているという。部長の狩俣さんは「絵を描くことが心底『楽しい』と思えるから、部活はストレス発散で元気のもと」と笑顔を見せる。
 美術部の主な活動は、毎年、夏に沖縄本島で開催されるスケッチ大会(主催・県高等学校文化連盟美術工芸専門部)への参加と、秋に行われる県高等学校文化祭に油絵やアクリル画、石こう像などの作品を出品することが挙げられる。校内活動としては、卒業式と入学式に、圧倒的な存在感で会場を彩る絵画の垂れ幕の制作と、ステンドグラス作品の下準備も手掛ける。毎年テーマを替えて主役の生徒たちを祝福する垂れ幕。今年のテーマは「躍動感」だった。ステンドグラスは在校生のほとんどが力を合わせて製作するが、下描きなどの準備は美術部が念入りに行う。2学期の後半から製作活動に入り、年が明けた2月頃には完成させるという。日ごろは個人活動のため、全員が顔をそろえることはあまりないが、ミーティングや共同活動の時にはここぞとばかりにチームワークを発揮する。部員数は現在15人。入学したばかりの1年生は、入部希望を受け付けているところだ。
 納得した作品に仕上げるためには、基礎的な技術が必要だ。特に1年生は、本村顧問や先輩たちの指導を受けながらデッサンに励み、基本をしっかり身に付けるという。
 そろそろ本腰を入れて受験の準備に取り掛かるため、近く美術部を「卒業」する予定だという上原ちひろさん(3年)「学年に関係なく、友達感覚で付き合えて、なおかつ自分のペースを守れる美術部が大好き。3年間、所属していて本当に良かった」と満面の笑みを浮かべる。「作品を完成したときの達成感や賞をいただいたときの喜びを味わえたことが何より嬉しい。飛び抜けて上手くなくても、やる気を持って日々の積み重ねを大切にしていれば、必ず喜びを感じることができると思う。これからも、自由な雰囲気の中で腕を磨き合う部活動をしていってほしい」と後輩たちへ寄せる思いを語った。

写真説明(上)・先輩、後輩の垣根を越えて、日ごろから気軽に意見を交わす
写真説明(下)・校内には、卒業生の作品も含めた美術部の力作が飾られている

 「表現力のある人に」 美術部 本村博之 顧問
 生徒たちと同様に「開けっぴろげで自由奔放な雰囲気が特徴」と話す本村顧問。そんな雰囲気の中で好奇心をどんどん広げ、さまざまな作品に挑戦してたくさんの喜びを味わってほしいと期待する。
 「美術の魅力は『創造する喜び』に集約される。卒業してからも美術をさらに楽しめるよう、すべての基本につながるデッサンの腕を高校時代に磨き、興味の幅を広げてくれれば」と、生徒たちに視線を注ぐ。「今」を思う存分に楽しむと同時に、将来は、美術部出身の証しとして確かな表現力を持つ人間に成長してほしいという。
 「社会人になってどんな職業に就いても、美術の技を生かす場面はたくさんある。それで人の役に立つことができたら、こんなに素晴らしいことはないでしょう」。

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