健やか生活は足腰から 


指定通所介護事業所デイサービスセンター 「結の里」

 「健やかな生活は丈夫な足腰から」。指定通所介護事業所デイ・サービスセンター「結の里」(染川隆弘代表)では、病気に縁遠い体をつくる「介護予防」の在り方に重点を置く。足腰が弱れば、他の身体機能や精神面にまで影響が及ぶとの考えから、デイサービスのメニューとしては全国でも珍しい温水プールでの水中運動を取り入れ、利用者から喜ばれている。今年6月には医師を迎え、問診を中心としたクリニックを併設する計画も。明るく元気な高齢化社会構築への一翼を担う。    (砂川智江記者)



利用者たちのリラックスした表情が印象的。効果的な運動や仲間たちとの弾むおしゃべりで、身も心もますます元気に

水中運動で心身を丈夫に

 「結の里」の染川代表は「現在、健康寿命と平均寿命の差は全国的に6年と言われている。2年前までは4年だったことを考えても、今後ますます差が開くことは予想される」と指摘する。「差」とはつまり、ある程度健康な状態から死に至るまでの「寝たきり」の期間を意味する。差が広がっているということは、寝たきりの期間が延びているということだ。
 「健康寿命」を延ばすためには、医療機関が役割を担う対象療法ではなく、病気にならない体づくりが求められるとし、同所では温水プールでの水中運動を取り入れている。水の負荷を利用すれば、陸上では大変な運動も楽にこなせる。あくまで、リハビリではなく「予防」だ。32度の温水を張った10メートルプールが設置されており、バリアフリーのプールサイドで車いすの利用者にも対応する。男女別に1クール5人ずつの30分間。ライフセーバーの担当者を中心としたスタッフたちが、安全に配慮しながら利用者それぞれの健康状態に即した運動を指導する。プールといっても着衣のまま入水でき、終了後は浴室に直行できる気軽さも人気の秘けつだ。お年寄りの利用が終わった午後4時から同6時までは、地域貢献の一環として幼稚園児や小学生たちに無料開放、親子連れでにぎわいを見せている。
 また、プールのそばには玉砂利を敷き詰めたスペースを設置し、血行を促す足踏み運動を推進。階段上りや歩行運動といった機能訓練の設備も充実。この他、目に優しい室内緑地や広々とした交流スペースも魅力的だ。バイタルチェックの検査結果や食事量の状況などは、個別に毎月データをまとめて家族に届け、家庭での健康管理や配慮の目安として活用してもらっているという。家庭との連携は何より重要だとの考えからだ。
 利用者第1号の仲間マツさん(80)は「昔は、月月火水木金金といって毎日働き通しだった。今はデイサービスで過ごすのが楽しくて仕方ない」と満足顔。与那覇シズさん(80)も「友達が大勢いるから、家にいるよりずっと面白い」と笑顔を見せる。
 さらに、今年6月には兵庫医科大学名誉教授の松岡瑛医学博士を迎え、健康相談や問診を中心としたクリニック「サンタクロース」を併設する予定だ。ネーミングの由来は、「健康な暮らしから生まれる『生きがい』をプレゼントしたい」との思いからだとか。松岡氏は、沖縄の離島へき地医療や住民福祉の向上に努めた功績があり、1980年には当時の西銘順治県知事から感謝状を贈られるなど沖縄とはゆかりの深い医師の1人。デイサービスとクリニックの連携により、宮古に住む高齢者の安心感や健康への意識向上につながりそうだ。
 休所日は日曜日のみ。提供時間は午前9時30分から午後4時まで。送迎あり。介護保険認定を受けていない人でも、800円で利用できる(送迎、食事あり)。

 写真説明(上2枚)・温水プールでの水中運動は、利用者たちの最も楽しい時間。男女別のグループで、ゆったりと足腰を鍛える
 写真説明(下)
・ほど良い大きさの玉砂利を踏んで、足の裏に刺激を

【利用者の声】
 3月6日、「結の里」の開所セレモニーで、利用者第1号の仲間源徳さん(86)、マツさん(80)夫妻が利用者代表のあいさつを述べた。同所では、人生の「先輩」が寄せた重みある言葉を額に入れて壁に掲げ、日々、スタッフの励みにしているという。苦難の時代を乗り越え、デイサービスという楽しみにたどり着いた利用者の声を紹介する。

「 第3の人生始まった」 仲間 源徳・マツ 夫婦

 開園おめでとうございます。本日、デイサービスセンター結の里の利用者代表としてお招きいただき、とても名誉な事と思い、大変うれしく存じます。
 私たちの今の気持ちは、第3の人生が始まったと思っております。第1、第2も悔いなく乗り越えて来たと思う今日このごろです。第1は戦争に巻き込まれ、第2は子育てに一生懸命になり、自分を振り返るゆとりもないままにこの歳になりました。長生きをして良かったと思います。これからは、千里を走る虎よりも、1里を歩く牛のようにのんびりとした気持ちでルールを守りながら夫婦仲良くして長生きしようねと話しております。
 こんなに豊かな時代が来るとは思いもよらなかったことです。このような豊かな時代が来たのも、明治・昭和・大正の方々のたゆまぬ努力と犠牲と頑張りのおかげだと感謝の気持ちを忘れないようにしようと思います。これからは、1日1日を大切にし、私達の健康を守って下さるよう、スタッフの皆さん、お世話になります。
 いつまでも健康な仲間にしてください。名前も仲間です。
                                平成17年3月6日
                                     仲間源徳
                                        マツ

「尊敬の気持ち大事」  代表 染川 隆弘 さん
 染川さんは、利用者のことを「先輩方」と呼ぶ。「先輩方に対する、尊敬の気持ちを最も大事にしている」と。全国展開の病院で医者の人事係を長く務め、2001年に退職。病院勤務の経験から、健康寿命を延ばす対策として対象療法よりも「予防」の重要性を痛感したという。
 「高齢者をお年寄りとして棚に上げず、現役としてどんどん活躍していただきたい」との思いから、心身の健康づくりをサポートする。

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