バガス、牛ふん 有効活用 

実証プラント運転開始

宮古島バイオ・エコシステム研究チーム

 琉球大学農学部を中心とする宮古島バイオ・エコシステム研究チームが、バガスの炭化プラントと牛ふん発酵によるメタンガス発電機の実証運転研究を上野村野原で開始した。2007年まで3年間システムの性能を実証し、同成果をもとに全国に展開していく計画という。  (新城孝夫記者)



琉球大学農学部の研究チーム。左から川満芳信助教授、小宮康明
助教授、上野正実教授、松島卯月助手、平良英三さん(大学院生)

視野は地球規模 CO削減

 生物資源(バイオマス)のエコシステム研究は▽地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)やメタンガスなどの排出抑制▽宮古島(島嶼)における物質循環システムの実用化▽環境産業の創出▽宮古農業の活性化―など地球・宮古島の未来を視野に、取り組んでいる。
 研究の拠点となる宮古島バイオ・エコシステム研究センター(上野村野原)には昨年12月までにバガス炭化プラントと小型メタン発電システムを設置。今年1月から運転を開始した。
 炭化プラントは、製糖工場から出るバガスを高温で熱し、炭と酢液(ウージ酢)を取り出す設備。熱源には最初、バーナーを使うが、その後はバガスから発生するガスを燃やす省エネシステムだ。
 同様な機能の炭化装置は、琉球大学農学部の上野正実教授をリーダーとする研究チームがすでに、宮古製糖伊良部工場に設置し、バガス炭とウージ酢作りに成功。この段階でバガス炭とウージ酢に環境保全や作物の品質向上などさまざまな効果(後欄参照)のあることが実証された。
 メタンガス発電は、牛ふんを発酵させてメタンガスを取り出し、ガスエンジンで発電するシステム。同装置は石油や石炭などの化石燃料の代替エネルギーとしての価値のほか、家畜排せつ物の適切な処理支援にも結び付く。絞りかすは堆肥に、発酵後の液は液肥に利用する。
 研究に参加する琉球大学の川満芳信助教授は「サトウキビは二酸化炭素を多く吸収する環境に良い作物。バガスの炭化は、この炭素を固定し空中に放出させないことで意義が大きい。バガス炭は、化学肥料の使用量を少なくし結果的に宮古島の地下水保全にも結び付く」と話し、バガスのリサイクル研究は、宮古の環境保全と農業活性化に役立つことを強調する。
 同センターには今年3月には汚泥炭化装置、05年度には高速堆肥化装置、複合燃焼エネルギー装置も設置される予定。
 宮古島バイオ・エコシステム研究センターの構成団体は次の通り。
▽琉球大学農学部▽独立行政法人・農業工学研究所▽宮古支庁▽上野村▽(NPO)亜熱帯バイオマス利用研究センター

 写真説明(上)・メタンガス発電プラント/牛ふんを発酵させガスエンジンで発電。この電気は試験場内の照明に利用されている
 写真説明(下)・バガスの炭化プラント/バガスを熱し炭とウージ酢を取り出している




   
出来上がったバガス炭


 

宮古のみなさんへメッセージ
 本研究は、温暖化抑制という地球規模の環境問題から、地下水保全など身の回りの問題を総合的に扱い解決することによって、農業を始めとする産業振興・地域活性化を目指すものです。この研究が成功すれば「島嶼(とうしょ)モデル」として宮古地域はもとより、県内・県外やがては国外へと発展していく可能性をもっております。そのためには、牛ふんなどの原料供給に協力いただく農家や、できあがったバガス炭、ウージ酢、堆肥などの利用を一緒になって研究するグループ作りが当面の課題となっております。できるだけ多くの方々に参加いただき、皆で知恵を絞って工夫していくプロジェクトを目指しています。なお、3月下旬には一般公開を行う予定です。ご期待ください。

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