「Bio-P(バイオ・リン)」の成果
世界に発表へ
地下水保全への可能性高く評価
宮古農林高校 環境班
「宮古島の大切な地下水を守りたい」。宮古農林高校環境班がそんな思いを込めて開発した有機肥料「Bio−P(バイオ・リン)」が、学会などから高い評価を受け、脚光を浴びるようになった。同肥料は、地下水を汚染している化学肥料の使用量減少を可能にする「優(すぐ)れ物」。同班は昨年の日本地下水学会に次いで、来る19日には第3回世界水フォーラム(大阪国際会議場)の舞台に立ち、研究成果を世界に紹介する。 指導者の前里和洋教諭が同校に赴任したのは、1997年。早速、生徒たちと研究テーマを話し合った結果、化学肥料などによる地下水の硝酸性窒素汚染問題に取り組むことになり、これが「Bio−P」研究の発端となった。 同班は、畑にまいた化学肥料のリン酸分と土壌中のカルシウムがくっついてできた難溶性リン(作物に吸収されにくいリン)が大量に蓄積していることに着目。同リンを分離して作物に吸収させやすい土壌づくりで、化学肥料の使用量を抑えることができないかにねらいを絞り、研究をスタートした。 リンの分離には、前里教諭の専門技術が生かされ、98年能力の高いリン溶解菌の選抜に成功。同菌を利用した有機質肥料は、バガスや糖蜜を菌のエサとして作り、「Bio−P」と名付けた。現在は、利用価値の低い木材チップも利用した「改良Bio−P」を開発し、新たな注目を集めている。 99年度のナスの栽培試験の結果では、化学肥料の使用を少量にしても、Bio−Pを併用すれば、普通以上に成長することが分かった。サトウキビでは、品質向上の面で成果を確認。これらのことからBio−Pの使用は、減化学肥料を可能にし地下水の硝酸性窒素汚染防止の有効な手だてになると考えられている。 現在、販売は宮古の産業まつりや同校のイベントなどに限られており、今後は、事業化(量産化など)への基礎研究が課題になるという。 前里教諭は、「生徒たちは、休みも返上して研究に取り組んできた。Bio−Pは、宮古の地下水を守るんだという生徒たちの熱意の成果。何度も壁に突き当たったが、よく辛抱して乗り越えた」と、生徒たちの頑張りを評価した。 琉球大学に推薦入学が内定しているリーダーの波名城なつきさんは「とても楽しくやりがいがあった。大学でも現在の研究を深めながら、農家のために役立つ知識を得たい」と、新天地でのさらなる研究に意欲を燃やす。 後輩の大井純一君(2年)=左写真(手にしているのが「Bio−P」)=は「みんなが1つの目標に向かって進む研究は、楽しく充実感があった」と、2年間の活動を振り返った。 世界水フォーラムで同班は発表ばかりでなく、琉球舞踊や琉球空手、宮古の民俗舞踊も披露する。 Bio―Pの研究に関し同班は2000年に「21世紀おきでん特別賞」。今年2月には沖縄青少年科学作品展で最高の県知事賞を受賞した。個人では、今年1月に波名城なつきさんが、「かけがえのない地球を大切に」全国作文コンクールで最優秀賞を取った。 |
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