インサイドリポート

質・量両面で向上必要

06年入域観光客数

市民の意識改革も不可欠

 

 県宮古支庁・総務観光振興課(下地洋一課長)が二十三日に発表した宮古地区の二〇〇六年入域観光客数は、前年比二千六百七十三人(〇・七%)減の三十九万六千六百十九人で、一つの目標となる四十万人には二年連続の足踏みとなった。一方、観光収入の推計は二百五億六千百四十七万円で、宮古をリードする産業であることに間違いない。数字を分析するとともに、今後の展望を考える。

 ◆統計手法の変更
 今回の数字について下地課長は、「観光客数としては減少し、統計上はシビアだが、ホテル稼働率が好調で、質は向上している」と話す。「シビア」になったのは統計手法が変更されたからだ。〇四年度に宮古観光協会(藤村明憲会長)が一万三千人余りを対象に実施した「宮古島観光企画調査」が基礎となった。
 〇五年の入域観光客数の統計までは、年間を通して同じ平均宿泊日数で計算していたものを、〇六年は同調査で算出した月ごとの平均宿泊日数を計算に用いるなど、「きめ細かく、より実態に近い数字となった」(下地課長)。
 これにより、滞在の短い団体客の多い冬場は多く、個人旅行で滞在日数の長い夏場は少ないという傾向で数字が変動した。
 ◆夏場の減少、冬場の増加
 〇六年の入域観光客数で特徴的だったのはオンシーズンとなる夏場(七−九月)が前年比で大幅に減少したことだ。
 要因に挙げられるのは、統計手法の変更だけでなく、この時期に〇五年に約一万三千人が来島していた台湾クルーズ船の運航休止、本土や沖縄本島への台風襲来、航空運賃やホテル料金の高いオンシーズンから別の時期への移行など、複合的要因が考えられる。
 一方、農協観光のチャーター便による来島や修学旅行、スポーツキャンプなどが好材料となり、一−三月は各月とも前年同月に比べ軒並み約二〇−三〇%の増加。客数の少ない十−十二月でもそれぞれ、前年同月比六−一〇%増えている。
 ◆ホテル稼働率、観光収入
 ビジネスホテルやリゾートホテルなど主要七ホテルの宿泊稼働率は、年平均七一・四%。初めて七〇%を突破し、好調さを示した。最も高い八月は九五・九%でほぼ満室状態。次いで、月別の観光客数が最も多かった三月の八六・五%。オンシーズンの七月も八三・六%と高い。
 観光収入の推計は二百五億六千百万円で、前年の二百五十億三千五百万円に比べ約四十四億七千万円の大幅な減少となった。〇五年まで用いた国内観光客一人当たり消費額六万四千八百円(一九九八年度調査)から、「宮古島観光企画調査」による一人当たり消費額、五万一千八百四十二円を用いたためで単純な比較は難しい。
 藤村会長は「景気の動向にも大きく左右される。一人当たり消費額は少なくとも二年に一度ぐらいは調査できれば」と述べ、より実態に近い推計を行いたいとの意向を示す。
 ◆今後の課題
 注目されるのは修学旅行による誘客。〇六年は二千四百人が来島しており、さらなる増加が見込める要素である。宮古島市の根間正三郎観光商工課長は「農業や海、文化など体験メニューを充実させ、堪能してもらうことで、リピーター化を図りたい」と力を込める。
 宮古空港の乗降客数は〇六年、百十一万九千百二十人で初の百十万人台となり、堅調な伸びをみせた。観光振興に向けた課題は、その受け入れ態勢づくりだけでなく、リピーター率の増加、「団塊の世代」の大量退職に伴う誘客、修学旅行やスポーツキャンプなど、多岐にわたる。その中でも藤村会長は、「市民の意識」を挙げた。
 「観光による波及効果について、市民の皆さんに意識を新たにしてもらいたい。自然を守り、マナーを良くし、心の温かさで歓迎していくことが大切」と、島を挙げたホスピタリティー(心のこもったもてなし)の重要性を強調。四十万人突破という数値目標だけでなく、質の向上を伴った観光振興が、宮古圏域の振興には必要不可欠だ。  (砂川拓也)

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