インサイドリポート

市側「唯一無二の建設地」
住民「住宅少ない場所に」

懸案の新ごみ処理施設/問われる市長の手腕と責任

 


老朽化が進み建て替えが急がれる市クリーンセンター

 懸案とされる新ごみ処理施設の建設地をめぐり、宮古島市(伊志嶺亮市長)と建設予定地の周辺に住む一部住民側との歩調が合わない。「唯一無二の場所」と言い切る伊志嶺市長に対し住民側は「住宅地にはふさわしくない」と一歩も引かない様子だ。
 ◇処理施設の現状
 「今の施設はいつ止まってもおかしくない状況だ」−。市の関係者が強調する。施設停止の事態に陥れば「宮古島市のごみは行き場をなくす」という不安がぬぐえない。指摘の通り現施設は稼働から三十年が経過、すでに耐用年数を超えており今は修繕と修理を繰り返して稼働を続けているのが現状だ。「つぎはぎだらけの施設」と指摘する声もある。
 「もう限界に達している」などと市幹部は言う。背景には現施設の西隣に建設するという方針を崩すと「もうどこにも造ることはできない」との市側の現実的な事情がある。
 ◇住民側の主張
 市が現施設に隣接する西側の市有地を予定地に絞り込んだのが昨年十一月。住民説明会を実施したが、住民からは「建設は住宅の少ない場所に」「百パーセント安全と言い切れない」と建設反対の声が上がった。
 昨年末には建設反対住民の会が結成された。候補地周辺に「建設反対」の言葉を書いた看板を設置。「子どもの健康守れ」などと建設に対する不安や不満を示している。
 これまでの建設案で現施設とは別の場所に建設されるという流れがあっただけに反対住民の落胆や怒りは大きい。三十年前に建設された状況と異なり、現施設周辺に住宅や公共施設ができたため「この場所はふさわしくない」と主張する。
 候補地が二転三転して次々と入れ替わり、西側案になったという経緯も反対住民の納得できない理由の一つ。ただ、市内部には「現施設西隣に建設しないとは言っていない」とする考え方があるのも事実だ。
 ◇候補地選定の基準
 市によると、現施設西隣を候補地に選定した理由は@ごみの排出量が多い市街地に近いため、ごみ搬入の経費軽減が図れるA施設の北側に取り付け道路を整備し、ごみ搬入路を二つにすることで危険個所を分散できるB将来のリサイクルセンターの建設計画にも対応できる−の三点。
 加えて「早く建設しなければ、もう間に合わない」という現実的思考がある。仮に建設地を決定しても、着工は環境影響調査(アセスメント)を行った後の二年後になる。稼働は早くても五年後になる計算だ。「それまでに施設が止まるとどうしようもない」という危機感をぬぐえない。
 市は今月中に、候補地近隣の住民約十人と先進地を視察したい考えで、施設の周辺住民の声を直接聞き取ることも検討している。
 ◇市の自信と住民側の不安
 市は、ある地域の住民を先進地視察に同行させながら説得することができず、候補地を断念したという苦い経験を持つ。故に今回は先進地視察の前に住民説明会を開催し理解を求めてきた。
 市内部には「先進地を見れば、必ず理解してくれる」という自信が見え隠れし、住民らがクリーンな施設を見てくれれば、「臭くて汚い」という従来の処理施設のイメージを払しょくできるという思いが背景にある。
 ただ、先進地を視察しても、住民側の不安が完全に解消されるかどうかは不透明だ。現施設とは別の場所に建設すると思ってきた住民らだけに、市の思惑とは別の方向に進む可能性も残している。
 懸案とされる新ごみ処理施設。伊志嶺市長は今の候補地については「唯一無二の場所」と言い切った。議会答弁でも「対象となる一軒一軒を回り、理解を求めていく」と現候補地での建設に並々ならぬ決意を示す。しかし、伊志嶺市長の決意が周辺住民に行き届いているかどうかについては疑問符を付けざるを得ない。伊志嶺市長のリーダーとしての手腕と責任が問われている。
(洲鎌恵仁)

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