インサイドリポート

伊良部漁協 未収金の回収が課題/宮古島漁協 車エビの徹底管理へ

伊良部・宮古島漁協決算問題

 伊良部漁業協同組合(奥原隆治組合長、正組合員百八十三人)と宮古島漁業協同組合(上原正行組合長、正組合員百二十四人)の二○○五年度通常総会が終わった。伊良部漁協は三年ぶりに黒字に好転し、一方の宮古島漁協は三年ぶりに赤字に転落した。二漁協の現状と課題を探った。  (伊良波彌)

 ■伊良部漁協、累積赤字六億円台推移
 通常総会は六月二十七日に佐良浜地区の前里添多目的共同利用施設で開かれた。○五年度貸借対照表では、純利益に当たる当期剰余金は五百四十八万円、累積赤字六億六千八百十七万円を計上。
 黒字決算とはいえ、ここ数年、累積赤字は六億円台を推移しており、経営運営は決して楽観視できない。
 ◇経営支える海面利用料
 当期は購買・販売・製氷冷凍などが黒字を計上し、事業総利益は四千六百六十四万円。事業総利益から事業管理費四千四百三十三万円を差し引いた事業利益は約二百三十一万円。
 事業利益に事業外収益千七十万円を加えた千三百一万円から事業外費用六百五十二万円を差し引くと、経常利益は約六百五十万円。さらに経常利益から特別損失百一万円を引くと、当期は五百四十八万円の黒字。
 宮古では池間漁協を含むと三漁協があり、伊良部漁協のみがダイビング事業者から海面利用料を徴収。ダイバーらから徴収した○五年度の海面利用総額は六百六十九万円。この海面利用料については、過去に旧平良市漁協と池間漁協が旧伊良部町漁協へ徴収を一任した経緯があり、今後三漁協でダイビング船の監視や分配方法などについて話し合うことが望まれる。
 ◇未収金など回収で経営健全化を
 経済事業未収金などが累積赤字の要因にもなっている。購買・販売・製氷冷凍などを含めた未収金は計一億四千八百五十三万円。販売仮渡金と販売立替金は計五千五百三十四万円。全額回収した場合は、二億円以上となる。組合員などの債務者一人ひとりが積極的に返済しなければ、漁協の健全な運営は成り立たない。同漁協の○五年度の事業管理費は四千四百三十三万円。未収金の回収は、同管理費確保に最大の近道である。
 ■宮古島漁協、累積赤字二億五千万円超
 通常総会は六月三十日、同漁協で開催された。○五年度貸借対照表では、車エビ養殖事業が失敗し、当期は三千三百二万円の赤字を出し、累積赤字で二億五千三百二十六万円を計上した。車エビ養殖場の砂を入れ替えないために、車エビの成育に影響を及ぼし、生産量は激減した。
 ◇車エビ養殖場に定期的な砂入れ替えを
 砂の入れ替えは一年先送りの、○七年度に実施する計画。この計画には組合員らは複雑な表情を見せた。
 漁協の役職一人は「今年度に砂を入れ替えれば良いが、厳しい運営の漁協には資金が無い」と語った上で「組合員の中には『今年度は、車エビ養殖場を休業させたら』という意見もある。しかし、車エビ養殖場は行政の補助事業で整備した。補助事業でできた施設を休業させたら、補助金返還となる」と説明する。
 本年度の車エビ養殖事業が、大幅な黒字決算になるかは先行き不透明。漁協は○六年度の生産販売原価九千百万円を見込む。その原価には原材料費や労務費、経費などを含む。
 今後は定期的な砂の入れ替え、母エビから採卵した後の洗卵、ふ化後の稚エビの検査、池の消毒と二重三重のチェック体制の強化、種苗生産の時期見直しなどが成功への鍵と考えられる。
 ◇モズクの一元集荷化を
 運営が厳しくなったもう一つの要因は、モズクの浜売りだ。総会の席上、上原組合長は「モズクの浜売りが増加し、組合の取扱量が減少した」と一元集荷の協力を求めるとともに、漁協に入る手数料減を憂慮した。その上で「モズク殺菌装置を導入したが、予想以上に稼働しない」と不満を漏らした。
 ◇組合員の返済を 
 経済未収金は一億一千九百三十一万円。債務者の組合員らが返済しないのが、経営圧迫の要因となっている。財務改善計画がスムーズに進展するには、組合員の誠意ある支払いが急務である。○五年度の事業管理費は四千七十三万円。

 写真説明・組合員が参加して各議案を審議した宮古島漁協の総会(上)と伊良部漁協の総会(下)

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