インサイドリポート

規制解除で再び混雑・当初の整備目的は何処へ

吉野海岸管理問題  

  城辺町の吉野海岸に下りる町道の交通を規制し、訪れる利用者から管理運営費として500円を徴収してきた城辺町(仲間克町長)が25日、約2カ月間続いた交通規制を解除し、管理運営費の徴収も廃止した。同町議会総務常任委員会(松川寿雄委員長)の判断による措置だが、利用者や仮の管理委託契約を結んでいた業者は突然の方針転換に戸惑いを隠せない。吉野海岸の管理問題について、町の行政運営と議会の主張を検証する。

 ■整備と管理

 宮古島の中でも「最高の観光地」として脚光を浴び続ける吉野海岸だが、2004年度半ばまでは海岸に下りる道路(町道)の凸凹が激しく、車の接触事故も発生した。
 この危険な状況の改善を求めたのが地元の吉野地区。議会の一般質問でも同地区出身の議員がたびたび交通の危険性を主張し、改善を求めてきた。
 これらの要望を受け町は04年度事業で同海岸の整備に着手。海岸までの道路を舗装した上で、海岸付近で車両が混雑しないよう崖上の部分に大型の駐車場を整備した。
 ただ、駐車場を整備しても交通を規制しなければ利用者は海岸まで車両で下りる。この点を勘案した町は海岸に下りる町道の交通を規制し、同海岸全体の管理を決めて管理業者の選定に入った。結果として町は地元業者と仮の管理委託契約を結び、利用者から管理運営費として車1台につき500円を徴収してきたが、ここに大きな落とし穴があった。

 ■町の「勇み足」

 通常、公的機関が金銭の徴収業務を行うのは条例事項。吉野海岸でいえば管理条例を定めなければならない。だが、町は議会で条例を定める前に仮の管理委託契約を結び金銭の徴収まで開始した。明らかな「勇み足」に担当課は「その点については認めざるを得ない」としている。
 今回の町の失政の原因は同海岸の管理を見切り発車的に推し進めたことが大きな比重を占める。当初、同海岸は吉野地区の住民が管理するという話が進んでいた。その話が突然立ち消えとなり、町は慌てた。急ぎ管理者を決めたい町は地元の業者と交渉に入り、仮の管理委託契約を締結した。これが事前に何の説明も受けなかった議会の反発を買った。

 ■議会の主張

 交通規制解除、管理運営費徴収の廃止という方針転換は町議会総務常任委員会の判断によるものだ。同委員会は「公道を規制するのはまかり通らない。町民の間でも不満の声が多い」と主張。その上で直ちに交通規制を解除するよう町に申し出た。町の担当課が「以前のように海岸付近で交通が混雑し事故が起きた場合の責任はどうするのか」との問いに対しては「それは自己の責任になる」として突っぱねたという。
 議会が反発する理由はまだある。条例制定前に町サイドの考えで管理活動を行い、かつ金銭を徴収。その行政運営を後で議会に「追認」させるやり方を議会軽視と判断した。
 ただ、交通規制解除と管理運営費の徴収を即時廃止すれば混乱が生じることは町議会としても判断できる範囲だろう。その混乱を回避するための措置を講じたのかどうかは疑問が残る。

 ■急がれる対策

 今回の管理問題における騒動は利用者や管理業者の不安をかき立てるものだ。特に仮契約であれ管理委託を受けていた業者にとって突然の方針転換は理解し難い行政運営に映るだろう。これまで管理運営費を支払った利用者が納得できないのも当然だ。
 本紙取材に対し町の担当課は「説明責任はある。これまで徴収してきた管理運営費の使途は公表したい」などと話すが、具体的な協議はこれからだ。
 海岸を管理するという町行政そのものは観光客や識者、多くの利用者が利便性や環境保全の面から高く評価している。ただ、今回は手順を誤り、かつ議会との調整を後手に回したことが混乱の引き金となった。しかし、利用者の多くが町と議会の論争よりも、利用しやすい海岸であることを求めている。町道の交通規制が解除された25日、吉野海岸では以前のように海岸付近が車で混雑し、利用者自身が交通量の多さに困惑している。
 今回の管理問題をめぐり町、議会の両者には利用者に対する説明責任が課されるとともに、当初の目的である良い観光地づくりに向けて対策を講じることが求められている。

                                        (山下誠記者)

 


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