衝撃・台風14号直撃 (中)

被害全容まだ把握できず/キビやハウスなど大打撃
 

 ■被害額の確定は来月いっぱい
 台風14号の強風で基幹作物のサトウキビは横倒しとなり、葉の裂傷も全域に及んだ。来期収穫予定のキビは大幅な減収を避けられそうになく、農家には経済的な負担が重くのし掛かっている。
 沖縄製糖、宮古製糖は、2003ー04年産のキビ生産を当初見込みから3万7253トン減の29万2968トンに下方修正した。今後、潮害の被害も懸念されており、生産量はさらに下回るものとみられている。
 夏植え作業も進行中であったために、すでにキビの苗を植えた畑では風雨で土が固まり、キビの発芽を著しく損ねている。農家は、耕運機などで土をほぐす作業に汗を流しているが、城辺町などの郡部の農村地帯では、停電が長引いたことも加わり農家の心労はピークに達している。
 また、今後夏植えを予定している農家も台風で被害を受けたキビから苗を取るため「健全な苗」が見込めず、長期にわたる不作の可能性も出てきた。
 城辺町の下地明長さんは、来期収穫を約90トン見込んでいたが「その半分も収穫できないだろう」と肩を落とす。準備していた夏植え用の苗も「芽が出過ぎてあまり良くないが、今の状況では植えるしかない」と言葉少なだった。
 県宮古支庁の調べによると、キビなどを含めた農産物の被害額は11億2200万円(24日現在)となっているが、いまだに全容は把握できず、最終的な被害額の確定には10月いっぱいかかるとみている。
 ■子供たちもショック
 農作物の被害は農家だけでなく、子供たちにもショックを与えている。
 町ぐるみで交流を進めている城辺町と新潟県板倉町は今年7月、城辺町内の畑で「交流を実らそう」として子供たち同士で稲を植え付けた。10月には収穫予定だったが台風で全滅した。
 植え付け作業を一緒に行った城辺町の担当者は、「力を合わせて植え付けた稲が全滅で収穫は望めそうになく、子供たちは涙を流していた。自然災害の恐ろしさや農家の人たちの苦労を子供たちもじかに学んだはず」と話した。
 ■経営に不安募る農家
 一方、野菜や果樹などをビニールハウスで栽培している農家も、施設に大きな被害を受け今後の経営に不安を募らせている。
 平良市宮原でマンゴーを栽培している上地源盛さんは、16棟ある鉄鋼ハウスのうちの14棟が倒壊した。管理棟や冷蔵施設も全壊。5年前に補助事業を導入して約1億8000万円かけて建設したが、被害額はその半分以上の約一億円だという。
 上地さんは「自分の力ではどうしようもない。行政に支援をお願いするしか復旧の方法はない」と訴えている。
 宮古農業改良普及センターでは、被害を受けた農家の相談を受け付ける「特別営農相談窓口」を19日に開設。農家の被害状況を聞きながら、今後の資金対策や再生産などのアドバイスをしている。
 同センターによると25日までに35件の相談があった。施設園芸ハウスの倒壊や肉用牛施設の損壊についての相談が多いという。
 担当者は「復旧に必要な資金の超低利融資や返済期間延長などを行っている金融機関などを紹介して、少しでも経済的負担を軽減していく指導を行っている」と話す。
 相談者の中には、施設を造ったばかりで資金の償還も始まらないうちに被害に遭い、途方に暮れている農家もいると言い、「一人で悩まずに相談に来てほしい。再建に向けての手助けをしたい」と呼び掛けている。
 ■国や行政の迅速支援求める
 県や各市町村などは、被害状況を早急に把握し、国などに対し高率補助の適用を進めている。また、県議会をはじめ各市町村議会も災害救助法または激甚災害法の災害地域の指定などの法令上の共済措置はもとより、法令の枠を超えた総合的な措置を講じるとした「緊急支援要請」を決議し、国に働き掛ける方針。
 しかし、今回の台風災害が、国の指定基準を満たすかどうかは今のところ不透明な状況にある。
 ハウスなどの施設被害額は、24日現在で14億700万円に膨れ上がっている。
 最新システムが整備された施設でゴーヤーやナスなどの野菜を水耕栽培している城辺町友利の「ティダファームたらま」でも鉄骨ハウスが損壊し、野菜が全滅した。被害額は約一億円という。
 多良間伸也社長は、気力を失いかけた職員らに、「こんなことに負けてはいけない。命あるだけ一からやり直せる」との言葉を掛けたという。
 「自分たちでできることはすべてやっている。あとは行政の迅速な支援をお願いしたい」と再建に向けて力強く歩み始めている。

 写真説明・強風で倒壊したマンゴーの鉄骨ハウス=12日、平良市宮原

 

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