衝撃・台風14号直撃 (上)

忘れた頃にやってきた/景観重視の建物構造があだに
 

 宮古島地方を直撃した台風14号は死者1人、負傷者83人、家屋の全壊13棟、半壊48棟ほか、基幹作物であるサトウキビなどの農作物や水産業などへ甚大な被害を及ぼした。台風が去った今なお、各地には大きなつめ跡が残っているものの、24日には停電が全世帯で解消、学校給食も再開されるなど明るい兆しも見え始めた。しかし、被害総額は85億6500万円余(24日現在)と、平良市の今年度予算のほぼ半分に当たる規模。台風が通過して約2週間。復興への道を歩む島の状況と課題などをまとめた。

 ■窓ガラスでの負傷者続出
 今回の台風では家屋の窓ガラスが割れ、その破片で負傷する人が続出した。厚さ2センチにも及ぶ宮古空港の管制塔の窓ガラスが木っ端みじんに割れ、室内のハイテク機器が使用不能ともなれば、雨戸のない民家の5-6ミリ厚のガラスは、今回の台風ではもはや防災的な役割は果たさなくなる。
 ガラス業者は「普通のガラスはたわんだりして、強風には耐えられる構造になっているが、物が飛んできて当たると割れてしまう。性質の良い強化ガラスもあるが、宮古ではあまり普及していない」と指摘する。
 地域によっては風速80メートル以上は吹いたと言われる強風には、景観や採光を重視した大きな窓ガラスを取り入れた民家や商店などは耐えられなかった。
 「まるで爆撃を受けたようだ」と見る人をびっくりさせた平良市にある宮古島リハビリ温泉病院や、城辺町のオーシャンリンクス宮古島のクラブハウスなどの窓ガラスの被害はまさにそれだった。
 「アルミサッシが普及し、景観重視の家づくりが進んでいるが、今回の台風で住民らは雨戸の必要性を強く感じたのでは」と話すのは城辺町の防災担当者。「台風は年中やってくるし、大きな台風は忘れた頃にやって来る。強風に負けない家造りへの工夫が求められている」と言う。
 ■避難所の再チェックと周知徹底必要
 住民の避難場所は、これまで庁舎や学校、体育館、公民館などが指定されていたが、今回の台風ではそのような公共施設が大きな被害に遭った。各市町村の防災担当者は「安易に庁舎や学校を指定していた気がするが、今後は避難場所の再チェックを行う必要がある」と話し、いかなる災害にも対応できる避難場所の確保や住民らへの周知徹底が重要だとした。
 ■倒壊電柱は882本
 倒壊・損傷した電柱は882本。そのほとんどが連鎖して倒壊し道路をふさいだため、台風時には負傷車を運ぶ救急車が立ち往生したり、う回を余儀なくされた。
 「長い間、電気の仕事をしているがこんな現場は見たことがない」。沖縄本島などから応援要員として来島した沖縄電力の関係スタッフらは一様に驚いた。「規模は違うが、阪神淡路大震災を思い出した」と話す観光客らもいたという。
 沖縄電力によるとコンクリート製電柱は、風速四〇~まで耐えられるよう設計されているが、物が飛んできて当たる場合は例外で、立地場所によっても違うという。「車が強風でごろごろと転がるのを見た」という証言もあり、同社では「予想外の要因が重なって、多くの倒壊に結びついたのでは」と話す。
 今回の電柱の倒壊で、電線の地中化を強く求める声が挙がっている。国は防災上はもとより、景観やバリアフリーなどの観点から電線地中化の整備を打ち出しているが、通常の電柱設置より15―30倍の予算がかかるため行政や電力、通信分野のいずれにおいても財政事情などから思うように進んでいないのが実情だ。

 写真説明・プレハブ倉庫が落下し車を直撃した災害現場=11日、平良市内

 

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