続・花は島いろ

泡盛製造法を化学的に研究

「醸造学博士号」を取得した

熱田 和史さん(37歳)

(宮古島市平良出身)

 「市場的には何年古酒ということだけが先行し、泡盛の価値が決められている。泡盛は単に寝かせれば良いというものではない」―。 今年二月、東京農業大学から県内泡盛メーカーで初めて「醸造学博士号」を取得した。平良出身で琉球大学の大学院卒業後に忠孝酒造に就職し現在、製造部研究開発課長として「泡盛」の製造方法を化学的な観点からアプローチし、昔ながらの製造方法を探求している。
 幼少のころ、宮古みそを作る過程で微生物を扱う発酵技術に興味を持ったことが泡盛への興味につながったという熱田さんは、「謎に包まれていた昔ながらの泡盛の製造方法を、化学的に解明したかった」
 現在の製造方法については「メーカーによって熟成の進め方もまちまち。泡盛の熟成によっては変な方向に進んでいるものもあれば、どんどんまろやかになっていくものもある。この違いはなぜ出てくるのか、熟成古酒になっていくメカニズムをもっと研究し、さらに深みある味の酒を造りたい」と「泡盛」の探求に対する意気込みは強い。
 今回の博士号取得について「通常の仕事をしながらの研究なので、論文を書く時間もあまりなかった。泡盛に関する文献も少なく、情報を収集するのが大変だった」と振り返る。
 熱田さんの研究テーマは「古式泡盛『酸汁(シー汁)浸漬法』の醸造学的意義とその復活化へのアプローチ」。約四十年前に廃止された「シー汁浸漬法」を微生物学的、醸造学的な見地から研究し高く評価された。醸造学の博士号取得は東京農大でも初めてだという。
 これまでに、研究論文を醸造学会誌などに掲載・報告し、七回の論文提出。その内容は多くの教授たちが認めた。七年がかりで博士号を取得した熱田さんの目は達成感にあふれていた。
 忠孝酒造の方針は、泡盛の昔ながらの製造技術の掘り起こしとともに新しい泡盛を造り出すこと。会社の方針と熱田さん本人の興味と泡盛に対する熱い思いが今回の博士号取得につながった。
 宮古出身らしく、月に一度の同級生との模合(もあい)ではオトーリも回すという熱田さん。「オトーリは場を盛り上げる。強制的に飲ませるのは良くないと思うが、コミュニケーションを取る手段としてはとても良い」と笑顔で話す。
 「泡盛はひとつの文化。ふるさと宮古にも地域独特の酒造会社がある。地域の酒を大事にしてほしい」と宮古の人へメッセージ。
 「飲む」泡盛と「造る」泡盛を愛する熱田さん。心から泡盛を愛することがおいしい泡盛を造る秘訣(ひけつ)かもしれない。

 熱田 和史(あつた・かずし)1968(昭和43)年9月17日生まれ。宮古島市平良出身。87年宮古高校、94年琉球大学農学部農芸化学科卒、94年に同大学大学院農学研究科農芸化学専攻修了。同年、忠孝酒造に入社し、現在同社製造部研究開発課長。99年から東京農業大との共同研究を開始し、2006年2月「醸造学博士号」を取得した。研究論文のテーマは「古式泡盛『酸汁(シー汁)浸漬法』の醸造学的意義と復活化へのアプローチ」。妻の久美子さん=宮古島市佐良浜=との間に1男1女。

                                     (川満勇人)
 

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