続・花は島いろ

「成功物語」つくりたい

PAS経営研究所長(サポーター&ビジネスナビゲーター)

下地 (さかえ)さん (54歳)
 
(平良市西里出身)

 今年の4月1日、那覇市壷屋にPAS経営研究所を開設した。「支援している企業と一緒に成功物語をつくっていきたい」と抱負を話す。
 1974年に琉球大学法文学部法政学科を卒業した。同年、琉球銀行入り。営業統括部業務開発課長、読谷・市場前・牧志市場支店長、りゅうぎんビジネスクラブ推進役などを歴任した。
 インキュベーション―。卵からひなをかえし、親鳥になるまで育てるという、経営用語だ。銀行勤務の間、この姿勢で企業を支援した。「銀行は雨の日は傘(金)を貸さず、晴れた日に貸すとやゆされる面もあるが、自分はそうではなかった。経営者の力量、ネットワーク、社の人材など総合的に勘案した。卵から育て上げた企業も多い。これがプロたるゆえん。この姿勢は今も変わらない」と、自負する。
 2002年、県産業振興公社から声が掛かり琉銀から同公社に出向した。ポジションは公社内にある県中小企業支援センターのプロジェクトマネージャー。ベンチャー中小企業の応援隊長だ。商品開発や販路開拓、財務戦略など支援内容は多岐に及んだ。3年間で支援した企業は約120社。情熱あふれる応援は実を結び、独創的な商品開発で実績を築いた企業に贈られる賞も次々に取るようになった。03年度には支援企業が「ベンチャー大賞」、「同奨励賞」、「同オンリーワン賞」の3賞を独占した。
 表彰規程が変わった昨年度は支援企業のバイオ21(相原正俊代表)が最高賞の「ビジネス・オンリーワン賞」を受賞。共に歩んでから5年目の快挙だった。
 「全く売れないころ相原さんと出会った。同社の化粧品は沖縄ならではの素晴らしい商品。しかし、売るのはなかなかだった。テレビショッピングに出てもらったのが大きなきっかけになった。そこから加速度的に伸びた」と話す。相原さんは「下地さんは、中小企業の目線で考え、支えてくれた」と感謝する。
 振興公社では、機関誌「SJO」をビジュアル化したのも見逃せない実績だ。「創造人」「旬事満載」などの企画ロゴが輝く。「母が書くことにうるさかった。それが社会に出て役立った」と感謝する。
 この春、晴れて念願の独立が実現した。社名のPASは経営理念の「PASSION」(情熱)、「ACTION」(行動)、「SAPORT&SUCCESSSTORY」(支援・成功物語)の頭文字を取った。現在、県内5社、県外1社の計6社を支援。若手経営者の勉強会「栄塾」も月1回開き、7月に50回を迎える。「共に歩み、企業の喜びを、自分の喜びとしたい」と、意欲を燃やす。
 10月1日から宮古島市となる古里に「この機会にマスタープランづくりが必要。土壌に合った特産品づくりと、観光をセットにしたら良いと思う。特産品は、島バナナ、ウコン、ムツウサなど可能性の高い物が多い」とメッセージを送る。

 下地 栄(しもじ・さかえ)1950(昭和25)年6月28日生まれ。54歳。平良市西里出身。69年宮古高校卒業。74年琉球大学法文学部法政学科卒業。同年琉球銀行入り。人事部、営業部企業融資課、営業統括部業務開発課長、りゅうぎんビジネスクラブ推進役など歴任。2002年県産業振興公社に出向。同公社内中小企業支援センターのプロジェクトマネージャーを務める。今年の4月1日「PAS経営研究所」を創立する。下地邦子さんの長男。妻・江利子さんとの間に2女。

                                                        (新城孝夫記者)

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