続・花は島いろ

「教師の情熱で生徒は変わる」

沖縄県警察本部少年課・安全学習支援隊長
 警察職員県知事表彰受賞


久高 義久(くだか よしひさ)さん(54歳)
 
(伊良部町佐良浜出身)

 【那覇支局】「生徒と教師の人間関係ができると、生徒は悪さはしない。情熱を傾ければ生徒は変わっていく」―。
 久高さんは現職警察官(県警部)であるが、県教育庁から委嘱を受け中学、高校の講師を務める。昨年9月から始めた全国初の支援授業で注目される県警「安全学習支援隊」の隊長。隊員はほかに警部補の3人。
 この安全学習支援隊の編成は、1999年に八重山署交通課長であった久高さんが八重山農林高校で「交通安全教育」の授業を行い、その成果が高く評価されたのがきっかけとなった。
 同校は、カリキュラムの見直しで、2年生を対象に全員必修の「安全教育」を取り入れた。久高さんは1、2学期に「交通安全」の授業を担当。5クラスを2組に分け、毎週水曜日の5、6校時に23回(46時限)実施した。
 久高さんは独特な口調で親しく語り、自身が取り扱った事故事例や賠償責任、暴走族問題などを講義。新聞記事やビデオを見せたり、生徒自身に自転車乗りの実態をビデオ撮影させるなど双方向の授業を工夫した。生徒たちはぐいぐい引き付けられ、授業の回数を重ねるごとに態度が良くなってきた。
 授業後の雑談の中で、茶髪の男子生徒に「顔がいいから、髪を染めなくてももてるはずなのに…」と声を掛けた。すると翌週の授業には黒髪に戻してきた。「驚きと感動で胸がいっぱいになった。みんなの前で私の警察服を着けさせて、記念写真を撮った。それを額縁に入れて本人に贈呈したら、たちまち話題になって、授業のムードがさらに高まった」。
 3回目のとき、授業中に眠っていた女子生徒に「学校に来て寝るぐらい、遅くまで勉強しているのか」と何気なく言った。それから1回も眠らなくなった。その後も生徒たちがピアスを外すなどの現象を目の当たりにし、久高さんは教師みょうりに尽きる思いだったという。
 この授業は他校へも波及しこの年、八重山署管内では高校生の事故や交通違反が前年より激減したと評価された。
 この実績を踏まえ、県内の深刻、多様化する少年犯罪に対応するため、警察と学校の連携事業として本格化させた。昨年は24校で65回、延べ1万5600人余の生徒に授業を行った。今年度は31校で200回以上に拡大、授業の効果に期待が高まっている。
 「授業は人づくりだ。そのため、生徒に愛情を持って接する。教師と生徒の人間関係づくりが大事」。子供たちの健全育成に情熱を燃やす。

 久高 義久(くだか・よしひさ) 1950(昭和25)年4月1日生まれ。伊良部町前里添出身。佐良浜小・中、宮古水産高校卒。68年4月那覇署外勤課開南交番勤務。69年3月から機動隊剣道特練員(12年4カ月)。82年糸満署交通規制係長、白銀少年剣道クラブ指導。98年から八重山署交通課長、警察本部交通規制課長補佐、那覇署交通対策課長などを経て、03年9月警察本部少年課安全学習支援隊長、現在に至る。04年県警察職員表彰で県知事表彰受賞。趣味は剣道(6段)、釣り、素潜り。妻の洋子さんとの間に1女1男。

                                                              (編集局長・川満幸弘)

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