続・花は島いろ

素材と格闘 挑戦の日々

リュウキュウマツにこだわる
木工家具職人県工芸士

宮国 昇 さん(55歳)
 
(上野村出身)

 海を見渡す宜野湾市の丘の上に、工房「ウッディライフ」はある。20年にわたり、県木・リュウキュウマツの「材」と向き合い、家具を作ってきた。2000年、その技が認められ「沖縄県工芸士」に選ばれた。県出身の版画家、名嘉睦稔さんから全幅の信頼を得て作品の額縁を手掛ける。昨秋来沖した秋篠宮殿下に贈られた紅型の額装も担当。県内木工職人の第一人者の1人だ。
 元々は棟りょうとして現場を仕切るほどの大工だった。ある日、リュウキュウマツの大きな机に出会った。「こんなに素晴らしい素材があるのか」。家具職人になろうと決めた。それまでついてきてくれた仲間に伝えるのは忍びなかったが、思いは止められなかった。決意を受け入れてくれた同僚たちへの感謝を忘れることはない。
 流れるようなリュウキュウマツ独特の木目は「1つ1つ、人間の表情のよう」。味わい豊かな木目を生かし、どのように命を吹き込むか。現在ではその美しさを引き立てる漆塗りの技術研究にも励む。「分からないことは次から次へと出てくる。職人は常に挑戦。素材を生かし切れたとき、良い結果が出る」と、日々格闘を続ける。その熱心さが、人を包み込むような温かさと重厚な強さを持つ家具を生む。
 「家具は日用雑貨」が持論。飾って見てもらう「作品」ではなく、日常生活で使われる「家具」を作るのが自らの仕事だと語る。「例えば自分が作ったテーブルを囲んで食事をする、その家庭が和を持てる。そういう家具を作りたい。お客さんが喜んでくれる顔を見ると、作っていたときの苦労は帳消しになる」。時折、家具のメンテナンスで客の家を訪ねる。気に入ってもらえるかと不安を抱きながら送り出した家具が、生活に溶け込んでいるのを見ると、気持ちがほっと安らぐ。
 1月、県庁一階で個展を開催した。それぞれに表情の違う家具が訪れる人を迎えていた。ふるさとの人たちにも自分の仕事を見てもらうため、宮古で個展を開くのが近い将来の目標だ。
 展示会のたびに尋ねられることがあるという。「今回のテーマは何ですか」。いつも答えに困るんだよな、と頭をかきながら笑ってこう言った。
 「芸術家みたいに何かを訴えるわけじゃない。僕は家具屋だから。一生懸命やるだけだよ」

 宮国 昇(みやぐに・のぼる) 1948年10月30日生まれ。上野村出身。上野小、中、宮古農林高校を経て、沖縄大学中退。70年に大工の道に進み、83年、工房「ウッディライフ」を設立。2000年、県工芸士認定。94年、第8回木製品加工技術コンクール県知事賞最優秀賞。96年、第19回県工芸公募展県知事優秀賞、第1回ウッディーグランドフェア琉球新報社社長賞。97年、沖縄三越で第1回個展開催。2000年、第22回県工芸公募会最優秀賞。ほか受賞多数。

  工房「ウッディライフ」
    住所:宜野湾市大山2-18-12電話:098-897-2178

                                                                   (砂川拓也記者)

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