続・花は島いろ

鏡の前で感動演出

きものコーディネーター

堀川 千代 さん(63歳)
 
(平良市西仲宗根出身)

 「女性なら必ず着物を着たいという願望はあります。素敵にコーディネートして、着付けをして、鏡の前で感動してもらうのが私の仕事。着付けがきつかったりして、きちんとできていないと着物を嫌いになってしまいますから」。
 幼いころから「和」の雰囲気にあこがれ、高校を卒業して宮古を飛び出した。着物一筋44年。京呉服の良さを伝え続けている。「年を重ねるほど味の出る仕事だと思っています。夢を追ってここまで来たんですね」と柔和な笑みを浮かべる。
 就職してすぐは先輩、後輩の関係が厳しく、店の番頭は絶対の存在。そんな環境の中で、基本から徹底的に指導を受けた。朝早く出勤して夜遅くに帰宅し、部屋では寝るだけ。遊ぶ時間も惜しんで勉強を続け、10数年経つころに京都での仕入れも任されるようになった。15年前に「きものコーディネーター」の試験に合格。皇室の園遊会やパーティーなどに出席するという客に呼ばれ、着付けのために本土にまで足を運ぶこともしばしば。客に信頼され、喜んでもらえることに満足感を得るようになった。
 1999年に独立した。不況の真っただ中で、周囲には心配する声もあったが、決意は固かった。着物に対する真摯な姿勢が認められた。店は那覇市内のビルの一角にひっそりとたたずむ。中に入るとほのかな畳の香りが漂うこじんまりとした落ち着いた部屋に、反物や着物が並べられ、「和」の雰囲気を醸し出す。
 「派手な着物よりもシックな、上品な着物が好み。わび、さびの世界が好きなんです。地味で渋めの着物でも帯や小物ときちんと合わせることで、本当に素敵に着られるんですよ」。
 着物の楽しさを味わった客が、2度、3度と店を訪れる。出会いが何よりも大切だ、と語る。それは人と人との出会いであり、良い着物との出会いでもある。座右の銘は「一期一会」。人それぞれ、いろいろな生き方や個性、雰囲気があり、着物を着る用途も異なる。それを瞬時に見極め、その人に合うコーディネートができるのは、多くの素晴らしい出会いを経験したからだろう。初めてのふるさとの展示会でも、新たな出会いが待っているかもしれない。
 「私はこの道しか知らないんです。これからも、着物を着てもらうことでどう感動してもらえるかを考えていきたいと思っています」。
 ◇   ◇   ◇
 堀川さんによる京呉服の展示会「千代好み総合展 宮古」は30、31の両日、平良市のホテルアトールエメラルド宮古島で開催される。

 堀川 千代(ほりかわ・ちよ) 1939(昭和14)年12月29日生まれ。平良市西仲宗根出身。北小、平良中、宮古高校を経て、57年に那覇市のたまや呉服店に就職。88年、きものコーディネーターの資格を取得。99年に独立し「きものの堀川」を設立。夫(故人)との間に1男。
 
                                                         (那覇支局・砂川拓也記者)

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