続・花は島いろ

お客さんの喜ぶ顔が一番

花の藤商社長

豊里 実令 さん(45歳)
 
(多良間村字仲筋出身)

 無類の『そばジョーグー』(そば好き)として、テレビ、ラジオで活躍。毎週日曜日のテレビ番組で豪快にそばを平らげ、両手の親指を突き出してミヤークフツで「ズミ!」と決めポーズをする、口ひげを生やした男性に見覚えのある人も多いはず。彼の本職は、県内に7店舗を構える生花店の社長だ。
 「花の藤商に来てみなさい。100円玉1個で大きな贈り物ができるさぁ」―。ラジオから流れる印象的なコマーシャル。多くの人に花を楽しんでもらいたいと、自ら出演した。毎週月・水・金曜日には、花の競りに出かける。店内には厳しい目で選び抜かれた色鮮やかな花々が並ぶ。訪れた客は顔をほころばせ、花を買い求めて店を後にする。
 「きざな言い方かもしれないけど、お客さんの喜ぶ顔が1番。それを見たとき、この仕事をして良かったと思うよ。この5、6年のことだけどね。それまでは、そこまで考えられる余裕がなかった」
 27歳で1号店を構えてから17年になる。花屋という職業に就くまでは「それこそ20ぐらいの仕事を転々としていた」。「よろず屋」をしていた店主との出会いが転機となった。野菜や果物に混じって、店には花も並んでいた。米軍に勤めているであろう男性が1輪の花を買い、女性にプレゼントする。その姿を見て、これだ、と思った。「藤商」はその店名「富士商」から付けた。以来、専務を務める妻・聡美さんらと手を取り合って、店を切り盛りしてきた。
 今年6月、あるカップルの結婚式を1万本のバラで飾るという壮大なプロジェクトをやってのけた。2人の喜びようは今でも忘れられない。「これは1つの夢だった。かなえば、また次の夢を見る。それがあれば、ずっと頑張れる」が持論だ。
 次の夢は「花の100均(100円均一)」。現在も1輪100円の花はあるが、大規模な売場はない。きちんとスペースを設け「安くできるものは安く提供して、たくさんの人に花を楽しんでほしい」と話す。
 いつでもユーモアを絶やさない社長に引っ張られ店内の雰囲気は常に和やか。花を手に店を出るお客さんを「ありがとうございました」と元気に送り出し店員に言う。「あい、ちゃんとサービスしたねぇ?」。花いっぱいの店に温かい笑顔があふれる。

 豊里 実令(とよざと・みれい) 1958(昭和33)年7月6日生まれ。多良間村仲筋出身。多良間小、中、那覇市の興南高校を卒業。さまざまな職種を渡り歩き、86年に有限会社「花の藤商」を設立。現在、県内に7店舗を構える。妻・聡美さんとの間に1男1女

                                                       (那覇支局・砂川拓也記者)

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