続・花は島いろ

「石橋をたたいて納得いくものを」

獣医師・みずほ台動物病院院長

兼島 孝 さん(39歳)

hanasima030502-1.tif (175280 バイト) みずほ台動物病院ではこの辺りでは見慣れないものが出迎えてくれる。「2年前、病院のキャラクターをシーサーにしたんですよ」と笑う。入り口はもちろん名刺にもホームページにもかわいい対(つい)のシーサーが愛きょうをふりまいている。医院の外来数は年間1万5000頭で1日4、50頭の診察を年中無休で行い、家畜の少ない都会では珍しいドクター4人、スタッフ10人という動物の総合病院だ。
 兼島さんは病院経営以外にも循環器学会、日本比較臨床医学会などの評議委員で数えきれないほどの研究会や学会に在籍するほどの多忙ぶり。本の執筆もこなし最近では「ヒトに伝染(うつ)るペットの病気」(実業之日本社)を出版したばかりだ。「目下、沖縄に分院を建てるのが夢です。今、恩納村にするか宮古にするか検討中。土地も見に行きましたよ(笑)」と番地やメモまで事細かに書き込んだ地図を広げてくれた。「石橋をたたいてたたいて納得いくものを求める性格」で、現在の病院建設には3年かかった。確かに病院内を見回すと、待合室のつくりをはじめ、防音ドアや波の音を入院施設に取り入れたりと、アイデアであふれている。
 その段取りの良さは元銀行マンの父親、恵孝(けいこう)さん譲りなのだという。「父はいつも段取りが良くて意見が正論なんです」と語る。進学時は「音楽は趣味にして獣医の道を選びなさい。逆はないのだから」と励まし、獣医師への道を開いた。開院当時、会計が得意で自らの仕事に組み込もうとしていた兼島さんに「会計は人に任せて獣医でトップになりなさい」とアドバイスした。今や経営などの相談では1番頼りになる存在だ。「尊敬していますね。父はとても宮古的で、いろんな人と濃い付き合いをしていますよ(笑)行事、冠婚葬祭は必ず出席し『親戚を大切に!』と四六時中言っていますね」なので宮古には事あるごとに訪れ、父の転勤で幼少期は数年暮らした。当時、正月三が日も休めない忙しい父のかわりに祖父母や親戚との思い出も多いという。「キビ刈りでは祖父が作ってくれたパリバンヤー(留守番小屋)でうずらのヒナをつかまえたり。毎日どこまでも探検していましたよ」祖父母とともに馬、牛、ヤギなどの家畜の世話をしながら、宮古の自然にはぐくまれた。泡盛、三線片手に政治論を語る祖父と孫の好物のポーク卵を作り続ける祖母。2人ははすでに他界。しかし「家畜とともに暮らす祖父のような晴耕雨読の人生が理想」と兼島さんが言い切るほど2人はいつも兼島さんの人生に寄り添っている。
 兼島さんはたくさんの家族親戚の写真をいつでも目に触れる場所に大切に飾ってあった。そのりりしい底なしパワーの秘密を見た気がした。

 兼島 孝(かねしま・たかし) 1963(昭和38)年10月15日沖縄市生まれ。父・恵孝(けいこう)さん、母・榮子さんの長男。宮古で幼少期を過ごす。88年北里大学大学院修士課程(獣医微生物学)を卒業後、東京大学(大学院研究生)修了。01年より北里大学大学院博士課程に在学中。妻の順子さんと2人暮らし。
  (東京・菊地優子)

 写真説明・殺処分予定だったサニーちゃんは兼島さんが引き取り現在、病院犬として活躍中

◇ みずほ台動物病院 ◇
 埼玉県富士見市西みずほ台1-21-5
  電話 049-255-1122  FAX 049-255-1121
  ホームページ http://www.mizuhodai.com

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