14年前、自宅の2階を増築して道場をつくった。近所の子供たちを集めて空手や琉球古武道を教えている。1999年には、「琉球古武道哲心館協会」を旗揚げし、独立した。
平良市の池間島で生まれた。11人兄弟の3番目。スポーツなどは特にせず、漁師だった父親の手伝いなどをして過ごした。
池間小、中学校を卒業後、ほかの兄弟たちと同じように、沖縄本島の高校に進学した。島を離れ、未知の世界での生活。「いじめられては困る」と思い、始めたのが空手だった。
「強さ」へのあこがれがあった。若いころは、がむしゃらにけいこし昇段試験にも挑んだ。だが、年月を経ると鍛錬しなくてはいけないのは『身体』や『技』ではなく、むしろ『心』だ、ということに気づいた。
「強さへのあこがれ」はしぼんだ。
琉球古武道との出会いは1980年。空手とは違い、道具を使って主に形の演武を行う。棒やかまといった生活用品をはじめ、ヌンチャク、サイなど八種類の道具を操る技に魅了されていく。
琉球古武道は日本よりも海外での人気が高いという。大里村にある哲心館の道場に通う弟子は5人しかいない。それに対し、哲心館だけで米国とカナダ、ドイツに計11支部を持ち、それぞれに道場がある。登録人数は計130人。玉寄さんは夏休みなどを利用して、海外のすべての道場に足を運んでいる。
「海外の人たちは心身を鍛えるという古武道の魅力を純粋に感じている。退職すれば1年の半分は海外で過ごすことになるだろう。老後の楽しみを与えてくれたというだけでも、古武道には感謝している」
今年の8月、「2003沖縄空手道古武道世界大会」が那覇市で開かれる。
世界各国の愛好家との交流を通して、沖縄空手道古武道の継承、発展、普及を目指す。そこで玉寄さんは、各流派、会派を代表してセミナーを開催することが決まっている。
空手古武道は武器を持たない平和を愛する沖縄の祖先たちが古くから護身のすべとするとともに、心身を修養、鍛錬してきた。
沖縄の伝統武術を通して「守礼の心」をもう一度、海外、そして沖縄県内にも広めていきたい、と思っている。
玉寄 英美(たまよせ・ひでみ)1949(昭和24年)7月14日生まれ。平良市池間出身。池間小・中学校、真和志高校卒。75年、沖縄大学卒業。美里工業設備工業科の実習助手。琉球古武道哲心館協会会長、現在は教士8段。ほかに「県子ども会育成連絡協議会」の副会長を務める。妻・正子さん(52)=下地町出身、旧姓川満=との間に1男3女。
(那覇支局・福元大輔)
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