子供俳句no.8/選・山田 弘子 2007/01/27掲載

講評
 みなさん、新しい年を希望一杯に迎えたことでしょう。今年初めてのみなさんの作品を楽しみに拝見しました。みんなの元気な顔が見えるようでした。クリスマスにはみんなプレゼントを、お正月にはお年玉をもらってとても楽しそうなようすが俳句の作品からつたわってきました。それは確かに楽しいことにはちがいありませんが、あまりにもプレゼントやお年玉の句が多かったので、もっとしっかりと自然に目を向けて、じぶんの発見の句を作ってほしいな、と思いました。これは個性(こせい)といいますが、みんなかおかたちがちがうように、感じかたもちがうと思うのです。クリスマスでサンタさんが待ちどおしいなとか、お年玉いっぱいもらったよ、というのでは個性がないのです。でも、感心したのはみんな俳句の五七五というリズムがすっかり自分のものになっていたことです。びっくりするようないい作品にもであえました。

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<特 選>
 城辺小一年 ふくざと まひろ
やもりさんおうちのうえでまちあわせ
 先生も宮古島でとまったとき、おへやのかべにやもりをみつけました。かたちはちょっとよくないけれど、じっとしていて、とてもおとなしくてかわいかったですよ。まひろさんもきっとおへやのてんじょうのあたりでやもりをみつけたのね。やもりさん、きっとだれかとまちあわせしているのかなあ、とかんがえたのね。とてもこころがきれいで、やさしいまひろさんです。

 平良第一小二年 たてつ かえ
うらをみせおもてもみせてもみじちる
  この俳句にであって、先生はびっくりしました。もみじがはらはらとちってくるのを、じっといっしょうけんめい見ていたのですね。くるくるとまいながらおちてくるもみじが「うらをみせおもてもみせて」ちってくるのをはっけんしたのです。じぶんのことばを大切にしてつくると、こんなすばらしい俳句がうまれるのですね。もみじのちってくるようすがみえるようです。

 鏡原小三年 砂川 沙弥香
げっかびじん月の光に照らされる
  「げっかびじん」というさぼてんのなかまの美しい花の名前をよく知っていましたね。漢字で書くと「月下美人」と書きます。月に照らされた美人という名前をもらっているんですね。この花は夜八時ころから咲き始め、花のいのちは四時間ほどです。月の光をあびて咲くげっかびじんの美しさがしっかりと伝わります。島でできる果物「ドラゴンフルーツ」の花も同じしゅるいですね。
 
 北小五年 下地 百恵
お正月俳句作りにはまってる
  お正月は「初もうで」「お年玉」「おぞうに」「おせち料理」「かるたとり」など俳句のざいりょうがいっぱいです。お正月の休みに俳句作りに夢中になっている百恵さん。先生はとってもとってもうれしく思いましたよ。お正月という特別の日を迎え、さあ今年はしっかり俳句も作ろう、というあらたまった気持ちも伝わってきます。どんな俳句ができたかなあ


 佐良浜中一年 長浜 瞳
キビの花風に吹かれて波を打つ
  畑にきびの花が咲いているのはとてもきれいですね。日が差しているとき、曇の日、雨の日、それぞれきびの花の銀色が違ってみえます。この句は咲きそろったきびの花に風が吹いて波打っているのですね。見たままをとても素直に表現しています。気持ちよさそうに銀色に波打っているきびの花。見なれた景色なのに、それをこんなに表現するととても新鮮な感じがします。

  佐良浜中二年 我那覇 和海
木もれ日の小さな光手ですくう
  この句には残念ながら、季節のことばがありません。ですから、先生もどうしようかなと迷いました。でも何度読んでもとても気持ちがいいのです。そして何となくきらきらとした秋の日ざしが感じられました。「小さな光手ですくう」なんて、和海さんは本当に詩人です。これに季節の言葉をいれると、「木もれ日の小さな秋を手ですくう」としたらばっちりですね。

 池間中二年 具志堅 泉
年越の神社の前は人ざかり
  「行く年来る年」という言葉がありますが、新しい年へと移る夜を神社におまいりして「カウントダウン」したのですね。この句は自分が体験したことを大事にして詠んでいるのです。あっちこっちから大勢の人が神社に集まってきて、新年を迎えようとしているのです。お祈りをしている人、挨拶をかわしている人、おみくじを引いているひと、いろんな人のようすが見えます。

 平良中二年 平良 愛
寒風の強すぎ犬も走らない
  毎日家の犬の散歩をしている愛さんでしょうか。それとも通りを歩いている犬の姿でしょうか。ビュービューと吹く風に向かっているのですが、いつもなら喜んで走っていく犬が、今日はたじろいでしまったのですね。そんな犬の表情をしっかりととらえた句です。犬と愛さんとのかかわりあいや、愛さんの犬に対する思いなどもよく分かります。ちょっとした発見がいい作品になります。

 池間中三年 仲原 和希
旅人が残す足跡紅葉散る
  なかなか言葉の使い方がみごとです。ちょっとした映画の一場面のような景色に仕上がっています。「旅人が」という上五から、読者は旅人は一人だろうか、二人だろうかと想像します。足跡を残していくのはどこだろう。アスファルトの上では足跡は残らないから、海辺かもしれない。はらはらと紅葉が散る中を旅人はゆっくりと過ぎ去っていくのです。刻まれた足跡にも紅葉が散ります。


 翔南高一年 上里 一成
秋風の夕日に染まる大神島
 宮古島から海を隔てて見える大神島にはいろいろな伝説もあるようですね。去年の十月に宮古島へうかがった時に見た夕焼けの海の美しかったこと。それは神秘的に感じられました。一成君は秋風の中に立ち、海の夕焼けにそまる大神島を臨んでいるのです。この句はとても大きな景色を詠んでいて感心しました。なにも説明をしないで、しっかりと対象をとらえているのです。
 

ワンポイントアドバイス
 いまはテレビのおかげで、世界中で起こっているニュースがすぐに伝えられます。ですから、南の島には見られない雪の景色も、テレビの画像から見ることができます。「あんなに雪が降っていいなあ」「どうしてこちらには雪が降らないのかなあ」という気持ちをそのまま俳句にした作品もあり、それはいいことだと思います。しかし自分で見たことのない景色を想像だけで作ることはあまり感心しません。じっさいにじぶんの目で見、はだで感じたことを作品にすると、力のあるいい作品になると思います。南の島にしかない景色や行事を大切に俳句にしていきましょう。

<準  特  選>

あきのあさにんじんたべるうさぎさん     城辺幼稚園 きんじょうひかり
おとし玉兄ちゃんとふたりそうだんだ     平良第一小二年 しもじ じゅんや
海風が冬の合図をだしている               平良中二年 根間 夏輝

<入 選 句>

きもちいいこころさわやかあきのかぜ      城辺幼稚園 さい かつき
あきのみちおちばたくさんおちている       西城幼稚園 まえさとみゆう
やしがにはつよいはさみだつよそうだ    西城幼稚園 かきのはな かいと
あきのかぜひゅうひゅうないてなみみたい  城辺小一年 さわだ りな
さかなつりをしてたらさかながとんだ      城辺小一年 なかの けいと
かたつむりあめがふったらおどりだす     城辺小一年 なかま たえ
ももたまなきいろいいろでいいにおい     城辺小一年 かわみつ あきほ
あきになってくさがきれいになってきた      城辺小一年 下地 だいき
ことりさんあさはくちびるたのしそう       城辺小一年 ふくざと まり
さむいあさあったかスープのみたいな    北小一年 たいら えりか
あついあさコケコッコーとうるさいな          北小一年 おやどまり なおや
あせかいていっぱいつれたすずめだい   北小一年 やました ひろみ
みつけたよくじらぐもいたあきのそら     北小一年 すなかわ りりあ
かえるなくげこげこげことなんのうた      
北小一年 よなは りゅうのしん
かかしがねはたけをまもってたっている  
城辺小二年 渡久山颯太
かみなりがうなったならばいぬほえる     
下地小二年 下地 沙羅
サンタさんゆめの中へととつげきだ       
平良第一小二年 池間  大
サンタさんゆめをいっぱいつめてくる       平良第一小二年 亀川りんかい
いちごなりうれしいことにあまかった       
平良第一小二年 まかべ ちか
あきになりもみじがおちてふかふかだ      平良第一小二年 かりまた みか
風がふくおち葉がいっぱいおどってる      平良第一小二年 方 世淳
たこ上げだもっととべとべ空高く             平良第一小二年 きくかわ あいや
冬休みいとこに会いに行くんだよ          
平良第一小二年 たけとみ ありさ
あきにはきれいなはっぱでてくるよ         平良第一小二年 山口 愛夢
楽しみだいとこがくるぞお正月             
鏡原小二年 みやかわ ゆき
お正月ぴかぴかの朝がやってくる          鏡原小二年 上原 たつふみ
お正月とてもまぶしい日がのぼる         
鏡原小二年 いは こうすけ
自転車でいちょうなみ木を走りたい        北小二年 古謝 葵
おちばがねぼくのあたまにおちてきた     北小二年 渡久山 巧季
おみこしのわっしょいの声かっこいい      北小二年 砂川 日華理
あきぞらのひこうきぐもにのりたいな       北小二年 ちな てうしろう
三日月が雲のあいだで光ってる            北小二年 松山 美月
宮古には雪がふらないなぜだろう         
鏡原小三年 柏谷 優太
お母さん寒いのに走るがんばれよ        
鏡原小五年 平良 魚武
持久走寒くてきんにくかたまるぞ           鏡原小四年 福里 菜奈
ああやだな毛布はがされ学校へ           鏡原小五年 狩俣 賀奈子
クリスマス雪がほしいぞ宮古島            
城辺小六年 田名 壮一郎
さとうきびかぜが吹くたびさわいでる       
城辺小六年 国吉 勇樹
とつぜんにサシバが現れおどろいた       
城辺小六年 仲里 葉奈
広大な空を背にして飛ぶサシバ            
城辺小六年 仲里 葉奈
さとうきび畑の中で歌ってる                  城辺小六年 高良 なつき
やきいもだあついぞあついやけどする     
北小六年 内原 美珠
クリスマス町がわいわいさわいでる          北小五年 塩川 万貴
冬の夜おふろに長くつかってる              
北小五年 山里 誠
虫の声夜空にひびく音楽会                   北小五年 奥平 南美
緑色秋には赤に変化した                    
福嶺小六年 平安 希歩
木々の色変わるのみんな秋のせい         
福嶺小六年 平良 塁
草むらで落葉の色を比べ合う                
福嶺小六年 友利 嵩道

空や風がヒューヒュー落葉舞う              
伊良部中一年 長堂 仁美
ブーゲンビレアの色に染まりし我が心     
上野中一年 西里 樹李
道の端ブーゲンビレア咲き乱れ            
上野中一年 平良 紗耶花
風にゆれ風に詩うブーゲンの花  
           上野中二年 橋本 翔平
ブーゲンビレアの花道通って登下校      
上野中二年 新里 瀬名
秋になり優しく語る空の色                  
佐良浜中一年 源河 友里菜
空に虹心も晴れる雨上がり                 
佐良浜中二年 山城 和弥
夕焼けやサシバが一羽一人旅             
佐良浜中二年 前泊 愛里
教室の窓ごし送る鷹の群れ                
佐良浜中二年 池間 多躍裕
ふとん出て冬を感じた今日の朝            
池間中二年 山口 綾香
草花が土の中から春を待つ                
池間中二年 佐久本 孟
冬の街トックリキワタが道しるべ           
平良中二年 砂川 実賀子
大そうじなくしたものを見つけたよ         
平良中二年 福原 康平
お年玉いっぱいもらう夢を見た            
平良中二年 伊良波 まこ
お年玉ポケットいっぱい胸いっぱい       
平良中二年 伊志嶺 尚子
寒空に熱い紅茶を一気飲み               
平良中二年 友利 泰斗
年忘れ足元ふらつき父帰宅                
平良中二年 友利 泰斗
午後八時こたつの中で足ずもう            
平良中二年 上地 華鈴
木の間から冬日がチラリ見えかくれ       
平良中二年 仲宗根 和紀
寒いねと赤くほおを染め笑う君             
伊良部中二年 前泊 江美
クリスマス頭の中で雪がふる          
伊良部中二年 島尻 真妃
雪だるま宮古島でも作りたい           
伊良部中二年 波平 愛美
冬が来て別れのときがやってきた      
伊良部中二年 宮国 真希
帰り道冬も一緒についてくる           
伊良部中二年 国仲 未来
暑い夜僕は腰ふりがんばった          
伊良部中二年 大田 樹
静けさが冬のおとずれ知らせるよ     
伊良部中二年 佐和田 広大
朝登校ブーゲンビレアがお出むかえ     
上野中三年 下地 匡
夕焼けに赤く染まりしブーゲンビレア    
上野中三年 宮国 美帆
見上げれば億千の星秋の空          
佐良浜中三年 久貝 巧真
秋の海白波たちが踊り出す          
佐良浜中三年 久貝 巧真
秋風に向かって走るたすきリレー     
佐良浜中三年 伊計 朋也
冬の朝顔を洗えば身がちぢむ         
池間中三年 浜元 功太
除夜の鐘ひびきわたるは白の海       
池間中三年 平良 亜也加
ミーニシが落葉と一緒におにごっこ     
平良中三年 下地 麻依
起きなさいふとんはぎとる冬の母        
平良中三年 上地 百華
この島は何か足りない冬なのに        
伊良部中二年 平良 美香

教室の隅にこもった冬の昼            
宮古農林高一年 垣花 圭亮
ひまわりと一緒に伸びてく心技体        
翔南高一年 下地 和歌菜
夏の海空と重なる青々と               
翔南高一年 仲間 沙稀
秋風の潮に打たれし釣人よ             
翔南高一年 上里 一成
夏の夜三味線の音島響く              
翔南高二年 宮国 絵梨奈
南風に吹かれて揺らぐさとうきび        
翔南高二年 吉村 総司
目に映るサンタの姿父だった            
翔南高二年 佐久田 美月
この想い冷たい海に流そうか             
翔南高二年 砂川 万里菜
星見えて冬の寒さが目にしみる         
翔南高二年 川満 真里奈
あるだけで冬の気配を呼ぶこたつ       
翔南高二年 久貝 美衣奈
クリスマス特別な日にバイトかな        
翔南高二年 下地 アサノ
大空にかすかに見えるさしば達             
翔南高三年 森田 詩乃

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。

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