子供俳句no.7/選・山田 弘子 2006/10/26掲載

講評
 どさっと届いた皆さんの作品にびっくりしました。大きなたからものが届いたような気がしましたよ。秋は運動会やお月見やお祭の行事などがいろいろあって、とても楽しい季節。それに、さあ勉強もがんばるぞ、というファイトが溢れている作品など、本当に楽しく拝見しました。ああ、私はまだ沖縄の行事など知らないことが沢山あるのだなあ、という思いもしましたよ。「シーシャーガウガウ」、今度行ったとき教えてくださいね。サシバもやってきたようですね。一晩休んでまた飛び立つ鷹が見られるなんて、そんなところはめったにありませんよ。鷹は季節のお客様ですね。しっかり観察して俳句に残してください。
「秋が来て」「春が来て」と始まる俳句、赤とんぼと夕焼けや夕日の取り合わせなど、みんなが作るような俳句ではなくて、自分だけが感じること、自分だけの発見、これを大切にしてください。初めて見る名前も多く、本当にうれしい作品でした。
(次回の投句締め切りは11月末です)

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<特 選>
 
西城幼稚園 かきのはな かいと
はたけにはみみずをねらってすずめくる
 みみずはすずめにとっては大ごちそうなのですね。みみずさんにはすこしきのどくなきもしますが、すずめも生きていかなければなりません。このよの中はおたがいにたすけたりたすけられたりして生きているのですね。みみずのいるはたけやたんぼというのは土がとてもこえていて上とうなのだそうですよ。いいところをみつけましたね。

 城辺小一年 ふくざと まひろ
おばあちゃんうんどうかいはっするはっする
  俳句は五七五というリズムをだいじにしなければなりませんが、この句はちょっとれいがいです。でもなんども口に出して読んでいると、運動会でのおばあちゃんの元気いっぱいのすがたが知らないひとにも見えてきます。「はっするはっする」なんておもいきったことばでいきいきとつたわってくるのです。まひろくんの大すきなおばあちゃんなのですね。

 鏡原小三年 本村 慧(けい)
セミさんにおつかれさんと声かける
 なんてやさしいけいさんなんでしょう。セミは生れてくるまで、長い長いあいだ土の中ですごします。地上にでてきたら、わずか一しゅうかんほどで死んでしまうのです。それまでせいいっぱい朝からばんまでなきますね。セミもつかれるだろうな、とおもったけいさんです。「セミさん、おつかれさん」って声をかけてあげたのですね。かんしんしました。
 
 城辺小三年  飯塚大悟
秋の夜だれかの声と風の音
 小学校三年でこんなすばらしい作品が生れるようになったのも、このはいくらんでみないっしょうけんめいはいくのべんきょうをしているからでしょうね。
しずかな秋の夜、風の音とともに、少しはなれたところから、だれかの声が聞こえてきたのです。たったそれだけをひょうげんしているのですが、秋の夜のかんじをしっかりととらえていて、みごとです。


 佐良浜中一年 仲地 苑華
シーサーも夕日を浴びてサシバ見る
 十月の寒露のころに宮古島群島を南下してくるサシバの群。宮古島の人たちはサシバの渡ってくるのを心から待っているのですね。先生も何年か前にサシバの渡りを見に行ったことがあります。ほんとうに感激しました。この句は島人たちと一緒に、屋根のシーサーも夕日の中でサシバの飛来を仰いでいると感じたのですね。シーサーにいのちを通わせています。

  平良中二年 大城 千鶴
台風でロウソクかこんで家族の輪
 ことしも大きな台風が宮古島列島を襲いましたね。私は天気予報をみながら、はらはらしておりました。宮古の人たちはもうすっかり台風には慣れているのでしょうが…。停電になり、電気が復活するまでほの暗いロウソクのあかりを家族で囲んで台風が通りすぎるのを待っているのでしょう。こんなところにも家族がこころを通わせあっているようすがつたわり、ぬくもりのある一句です。

 平良中三年 垣花 愛海
台風でみんな飛んでく行方不明
 この句も台風の句ですね。猛烈な風でなにやらかにやら吹き飛ばされています。看板が飛んだり、その辺のゴミ箱の蓋が飛んでいったり、それらをひっくるめて「みんな飛んでく」と表現し、下五を字余りにして「行方不明」と置いたところがとても効果を出しているのです。こうした自分の言葉を勇敢に使うと、一句がとても生き生きとした力のある作品になります。

 佐良浜中三年 久貝 巧真
夕暮れの空を支える鷹柱
 鷹の群れが固まって渦を巻くように上下に連なることがあります。それを鷹柱というのですね。巧真くんはいいことばをちゃんと一句のなかに取り入れました。しかも「空を支える」という表現がすばらしい。天と地の間に出来た鷹柱が空を支えていると感じとった感性がすばらしい。大人顔負けの立派な作品だと思います。これからもどんどんいろんな景に挑戦してみてください。


 宮古農林高一年 垣花 圭亮
真夜中の牛の鳴き声島の夏
 真夜中に近くの牛小屋から「モーゥ」と鳴き声が聞こえてきました。たったこのことだけを一句にしたのです。昼間なら何気なく気がつかずに過ぎてしまうようなことが、夜の静けさの中ではひときわ大きく聞こえたにちがいありません。下五の「島の夏」という据え方が上手いですね。一句の形の整え方がすばらしいと思います。

 翔南高二年 砂川 万里奈
長い髪今日でお別れ夏の夕
 肩のあたり、いやいや背中の方まで届くほど長く伸ばしていた万里奈さんの髪でしょうか。女の子にとって髪の毛はとても大きな関心事ですよね。何かの心境の変化か、それとも夏だから軽快にしなさい、とお母さんに言われたのか、明日は美容院で短くしてこようと決心したのですね。「今日でお別れ」には黒髪への思いがこめられています。「夏の夕」の持つ雰囲気も効果的です。
 

ワンポイントアドバイス
 いつもの年だと中秋の名月は九月ですが、今年は暦の関係で中秋の名月は十月六日でしたね。秋は空も水も澄み切ってくる季節ですので、月もことのほか澄み切って美しく輝きます。ですから月は特に秋の季題になっているのです。「待宵」「名月・十五夜」「十六夜」「立待月」「居待月」「寝待月」「宵闇」など夜ごとに月の名前が変わってくるのも、昔の人が月に強く心をよせていたことを物語っています。また月が出なくても「無月」「雨月」といった詠み方もします。「雪」「月」「花」は風雅を代表するよい眺めとして、昔から詩や歌に詠まれてきました。
私も月の句を作りましたよ。
  無月には無月のなさけ持ち寄らん 弘子
  月の供華いだき六甲山下る    同
  雲を脱ぎきりたる月のふと怖し  同

<準  特  選>

読書する言葉の金庫いっぱいに     平良第一小五年 仲間 千穂
ソーダー水もぐった海を思い出す     平良中一年 天久 あまね
<入 選 句>

ちょうちょうがねひろいはたけにとんでるよ 西城幼稚園 まえさと わか
きゅうりさんちいさいねどんどんおおきくなってね 城辺幼稚園 さくがわたけし
うさぎさんピョンととんだいいてんき      城辺幼稚園 きんじょうひかり
はちさんがおはなのみつをすってたよ    城辺小一年 かわみつ あきほ
目がさめたちょっとさむいもうあきかな     城辺小一年 なかま たえ
つきみたらつきにむかってほえたいよ    鏡原小一年 みやぐにふうが
うごけない光の中の赤とんぼ           南小二年  たいら りょう
まん月に見とれてねむくなっちゃった     平良第一小二年 まかべ ちか
お月さまキレイな海でおよいでる       平良第一小二年 安里 静香
さらさらとあきのにおいがしてくるよ    平良第一小二年 小川 美月貴
つばめたちあおぞらとんできょうそうだ  城辺小二年 下地 涼香
シャボンだまふわりととんで空のたび   城辺小二年 益田 大輔
十五夜のエイサーおどり見てたかな    平良第一小二年 長浜 大祐
きらきらとあきの木がみずをあびてる   鏡原小二年 しもさと かりん
くりごはんおいしく食べて力でた       下地小二年 石嶺 きこ
かまきりにうちはどこだときいてみた    下地小二年 下地 さら
秋がきた本にさそわれ読んでいく      城辺小三年 荷川取 星弥
パイナガマジェットスキーで水しぶき    鏡原小四年 川上 翔平
運動会バトンを手わたしまかせたよ     鏡原小四年 宮城 愛莉
秋の夜家族みんなで星を見る        下地小四年 渡真利 香菜美
青空にサシバいっぱい飛んでいる      下地小四年 洲鎌 葉月
サシバとぶさんぽびよりにさいこうだ    下地小四年 砂川 ほの
大空に羽をひろげるサシバ見た       下地小四年 川満 磨里
サシバ見てちかくでみたいこわい顔     下地小四年 川満 香織
運動会わたしがしゅやくたのしいな     下地小五年 池間 千菜美
秋の風少し冷たく顔なでる              平良第一小五年 洲鎌 奈都美
日曜日秋を感じてうたを読む         平良第一小五年 狩俣 裕介
君達が眠くなるのは秋のせい        平良第一小五年  砂川 秋穂
クーラーにおれいを言ってカバーする    平良第一小五年 与那覇 有愉
赤とんぼ頭にとまりかみかざり        平良第一小五年 下地 理乃
運動会がんばったよと赤い顔        城辺小六年 狩俣 美沙樹
運動会ドキドキしたぞ組体操          城辺小六年 仲間 亮
クロアゲハカラスになって飛んでいる    城辺小六年 仲里 はな
天高く声をはりあげエイサーおどる     城辺小六年 田名 壮一郎
朝顔の大輪の花と笑顔の僕              神奈川県杉本小六年 川上 純
夏休み手伝いするよと言ったきり      神奈川県杉本小六年 長嶋 桃子
夏休みむだに使った五千円         神奈川県杉本小六年  山本 南帆
ひよどりは子供のためにかくとう中     福嶺小六年 根間 智之
ガジュマルの下にねむるとすずしいな    福嶺小六年 友利 嵩道
タンポポはたくさん知恵がつまってる    福嶺小六年 平安 希歩
吹く風にさらされながら舞うサシバ      伊良部中一年 宮城 栞
グラウンド走りこけてる僕がいた       上野中一年 狩俣 翔太
かたつむり意外と根性ありますね      平良中一年 比嘉 樹利
雨の日は歩きにくいねかたつむり      平良中一年 砂川 拓輝
落葉ふみいい音だなとまたふんだ      平良中一年  砂川 達路
こいのぼり私を空へと連れてって      平良中一年 新垣 優美
送り火や先祖を想うまた来年         佐良浜中二年 前泊 愛里
運動会笑顔の分だけ楽しかった      上野中二年 川満 貴介
授業中遊びにきたよ秋あかね        平良中二年 砂川 裕代
にがうりのとんがりのような中学生      平良中二年 大城 叶子
おはようと木々の中から新松子       平良中二年  池村 茜音
夕焼けが海にぷかぷかうかんでる     平良中二年  伊志嶺 尚子
ゆらゆらと島渡りゆく赤トンボ         伊良部中三年 冽鎌 美咲
秋色に黒板見ずに空を見る         伊良部中三年  久高 里奈
遊ぶ子の上飛びまわるタカの群れ     伊良部中三年  亀川 純希
帰り道日暮れの空に秋の気配        伊良部中三年  下地 愛莉
赤とんぼ台風誘って舞うのかな       伊良部中三年 上地 妙果
夏空や「我らが勝つ」と字合戦        伊良部中三年  嘉 未来人
夏風とともにすぎゆく思い出も        伊良部中三年  佐和田 尚也
サシバ舞う仰ぎみて解く友の問い      伊良部中三年  仲地 亮大
松の木で羽を休める鷹一羽         佐良浜中三年 伊計 朋也
そらまめをゆでた香りと父の顔       平良中三年 上原 規代
炎天下鳴いてるセミも黙りこむ       平良中三年 砂川 沙織
読書の秋こっそり読んじゃう授業中     平良中三年  伊地 志織
今見えた光は星か蛍火か           平良中三年  川上 潤子
思い出す麦わら帽子の忘れもの       平良中三年  丘 シャオユン
お母さん青いハンカチうれしそう       平良中三年  砂川 瑛甫
夕立が過ぎてく季節を追いかける      平良中三年  洌鎌 琴美
アサガオの種とり夢中一時間        平良中三年  池間 ひかる
夕立も一緒に泣いたコンクール       平良中三年  与那覇 成美
うちわもち昼寝の弟笑ってる        平良中三年  浜川 和音
大空に歓声響いた運動会          上野中三年 宮國 美帆
運動会汗と涙が輝いた           上野中三年 友利 有登
運動会心ひとつにピラミッド         上野中三年  根間 力哉
やすらぐよさわさわゆれるすすきの穂    宮古高一年 垣花 友夏里
真夜中の虫の音色や島静か         翔南高一年 上里 一成
秋になりおなかが減ってしょうがない     翔南高一年 砂川 彩
ひらひらと舞い散る落ち葉紙吹雪       東京国学院高二年 伊奈川 玲美
朝早く新聞配る汗のあり             翔南高二年   宮国 智秋
キビ植の土やはらかく踏みにけり     翔南高三年 東風平 祝

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。

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