子供俳句no.6/選・山田 弘子 2006/09/06掲載

講評
 梅雨明けの報道を待たないで、宮古島地方には次々に台風がやってきて、私をはらはらさせました。被害はなかったかしらと心配しています。でも皆さんの元気な俳句を見て、安心しました。
 今月の俳句には、今まで見なかった「文語体」の俳句が登場し、先生をびっくりさせました。〈波しぶきくだける音に夏ありて〉。もちろん高学年の人の作品ですが、俳句は文語体で作る、ということを先生に教わったのでしょう。いろいろなことをやってみてください。
 もう一つ。「俳句は季題(季節のことば)を入れる」ということはもう皆さんよくわかってきましたね。季題は出来るだけ「一句に一つ」ということを守ってみてください。〈夏が来てあつくて海で泳いだよ〉という句を考えてみましょう。夏はあついのが当たり前。「泳ぐ」というのも夏の季題なので、この句には季題が三つも入っていることになるのです。もちろん有名な句にも季題が重なっている句はありますが、皆さんはなるべく「季題は一つ」と覚えてください。

(次回の投句締め切りは九月末です)

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<特 選>
 
城辺小 一年  すなかわ たつき
かわせみがさかなをとってたべてるよ
 すなかわくんは「かわせみ」のようすをじっとかんさつしていたんだね。かわせみという鳥はみどりや赤のいろをしたとてもきれいな鳥です。くちばしがおおきくて、川のあたりに止まり、じっと川の中のえものをねらってすばやいスピードでさかなをとらえます。そのようすをしんけんに見ていて、こんな句がうまれましたね。ものをしっかり見ることはとても大切です。

 南小二年   たいら りょう
たいわんへたいふう5号にげてった
 年になんどもたいふうがやってくるおきなわ地方ですが、ことしもつぎつぎとやってきて、とてもしんぱいでした。5号はかなり大きかったね。それがたいわんの方へ行ったのを、こころからほっとしたりょう君です。たいわん、たいふう5号ときちんとことばにあらわしてよむ人にすぐにつたわる句になりました。

 城辺小 一年  なかま たえ
たいふうでかわいいはなもたおれたよ
 たえさんもたいふうの句ですね。にわの木や花がたいふうにやられてしまわないかとはらはらしていたのですね。たいせつにしていた「かわいい花も」やられてしまったんだね。この「も」という一字がとてもよくはたらいています。この「も」によって、ほかにもいろいろたいふうのひがいにあったということがわかります。一字もだいじにしましょう。
 
 城辺小 五年  友利 あいり
じょろうぐもせなかあたりがへんないろ
 いぜん、先生は沖縄地方の女郎ぐもの大きさにびっくり仰天しました。すごい大きさですね。くもの巣にじっと獲物をねらっている女郎ぐも。その背中のへんの色に注目したのです。「背中あたりが」という表現もいいし、はっきり何色といわず、「へんないろ」と思ったとおりをそのまま一句にしたのもいい。こんなふうに、自分の気持ちをすなおに表現すればいいのです。

 城辺小 四年  下地 遼太
くもとぼくせみがとれるかくらべっこ
 くもは巣をはって、そこに蝉が掛かってくるのをじっと待っている。遼太くんは網で蝉をつかまえようとしているのでしょうか。くもとぼくとどちらがさきに蝉をつかまえられるか…、と自分で競争しているのですね。さて、どちらだったかな。この句のファイトぶりからして、多分遼太君の方にぐんばいがあがったにちがいありません。



  池間中 三年  平良 亜也加
波しぶきくだける音に夏ありて
 講評のところで書きましたが、この句は文語を使っていることに感心しました。無理に使ったのではなく、ごく自然にでてきたのだと思います。「ドドーン」と威勢良く砕けては散る波しぶきの音、これはまさに夏そのものだと感じ取ったのです。音を描いているのですが、波しぶきのまぶしい白さも見えてくる句です。そして音に夏があると感じ取った詩情がすばらしい。

 伊良部中三年  久高 拳志郎
アスファルト夜になっても熱いまま
 日が沈んで夜になると、海から吹いてくる風もどことなく涼しく感じます。ところがアスファルトの上は昼間の熱気がそのまま残っていることを発見したのです。「ああ、道路の上はまだこんなに熱いな」と感じ取ったことをそのまま俳句にしたのがすばらしい。昼間がどんなに暑い一日であったかを、読者にしっかり伝えてくれています。

 平良中 二年  比嘉 真鈴
席がえで見えなくなったな入道雲
 教室の窓いっぱいにむくむくと真っ白の入道雲が見えていた席。雲を見ているとなんだかいつも元気が出てくるような気がしていたのでしょう。ところが席替えがあって、入道雲の見える窓から遠い席へと移ってしまったのですね。ちょっぴりがっかりした様子が一句から伝わってくるのです。こうしたちょっとした変化をとらえて、このように素晴らしい句ができるのですね。


 翔南高 一年  上里 一成
炎天下影を求める旅人よ
 じりじりと太陽が照りつける日を「炎天」といいますね。くらくらするほどの暑さの中を歩く旅人。どこか木陰はないかと探し求めながらひたすら歩いているのです。この句は余計なことを言わないで、とても歯切れよく一句が仕上がっています。特に感心したのは下五の「旅人よ」と語りかけるような切れで仕上げているところです。俳句の姿がとてもいい。

 翔南高 三年  東風平 祝
さがり花辺り一面匂いけり
 南西諸島に咲くといわれる「さがり花」。夜咲いて朝には散ってしまう幻想的な花は咲くときにとてもかぐわしい香りを放つというのです。実は先生はまだ見たことがなく、今度宮古島を訪れたときに見ることが出来ればと期待しているのです。 東風平さんは初めてみたさがり花があたり一面に芳しい香りを放っていることにとても感動したのですね。「匂いけり」という文語の使い方もいい。
 

ワンポイントアドバイス
 おもしろい句があってほんとうは入選にしたのだけれど、字数が余っていてもったいないな、とおもいながら落選にしました。〈九時十五分くわがたさがしに夜のパトロール〉という句です。九時十五分が言いたかったことでしょうが、思い切って〈くわがたをさがしに夜のパトロール〉としてはどうでしょう。ちょうしもよくなりましたね。俳句ができたら、いちど声にだして読んでみてごらんなさい。


<入 選>

かまきりがせみをつかまえうれしそう  城辺小一年 へんざん まさや

なつのそらどこまでつづくきれいだね  城辺小一年 なかま たえ

なつのひもりにいったらくわがたがいたよ 城辺小一年 ふくざとまひろ

たいふうはかぜがひゅうひゅうないていた 城辺小一年 さわだ りな

みつけたよいろんなとかげおもしろい  城辺小一年 なかの けいと

うみへびくんどっちがかおかわからない 城辺小二年 川満 涼奈

オジギソウおじぎをするよかわいいな  城辺小二年 下地 涼香

かぶと虫よるはとんでいっちゃうよ   城辺小二年 へんざん ももか

母さんととおってみたいよそらのにじ  城辺小二年 佐久川 香菜

オジギソウさわるとしぼむまたなおる  城辺小二年 垣花 槙吾

かぶとむしぼくとたいけつはさまれた  城辺小二年 益田 大輔

くわがたはあさにはねむるよるうごく  城辺小二年 益田 大輔

プールでねうかんでいるよあめんぼが  城辺小四年 下地 遼太

ひまわりをいつも見てたらこげパンだ  平良第一小 二年 安里 静香

たなばたでねがいをこめてささのはへ  平良第一小 二年 伊良部 里佳

なつやすみはやく行きたいおまつりへ  平良第一小 二年 ともり りの

カブトムシすごいつのでねなげとばす  平良第一小 二年 福原 誉瑛

このあつさとけてしまうよなにもかも  平良第一小 二年 新里 楽

たなばたはすずしいかぜがふいてくる  平良第一小 二年 稲村 有紗

台風でざぶんざぶんと海のなみ 
    平良第一小 二年 まかべ ちか

なつがきたうみでしゃしんをはいピース 平良第一小 二年 ながはま しほ

たなばたできらきらぼしにねがいこめ  平良第一小 二年 上地 菜々美

ふうりんは風にやさしいおとだよね   平良第一小 三年 まえどまり あさい

夏休み楽しいことをつくるんだ     平良第一小 三年 戸田 ももか

海の日は海にいくんだ大波だ
      平良第一小 三年 なみひら ゆま

夏休みゴーゴー海でボッチャン     平良第一小 三年 きんじょう だいき

つくりますともだちいっぱい夏休み    平良第一小 三年 いけま いおり

海行って大きなタコとおどろうよ    平良第一小 三年 いけま ふうき

パタパタとうちわをはたく季節かな   城辺小 六年 仲里 葉奈

ひららにはひまわりいっぱい咲いている 城辺小 四年 下地 恵美梨

夏休みいとこの家に行きました     城辺小 四年 高江洲 彩香

扇風機こわれて修理待ち遠しい     城辺小 五年 荷川取 弥早

夏休みおせわになるよおじいおばあ   城辺小 五年 古謝 伸弥

カマキリが虫をつかまえたべている   城辺小 五年 川満 祐

夏なのにセミの鳴きごえ聞こえない   城辺小 五年 川満 稔眞

ねむい朝めざましどけいセミの声
    鏡原小 五年 狩俣 賀奈子

ヒューヒュー台風だ口笛ふいてるみたいだな 鏡原小 五年 荷川取 加奈子

台風だマドがピューピューおこっている  鏡原小 五年 平良 鮎武

すいかはねとてもオシャレなおちゃめさん 鏡原小 四年 新垣 悠

自転車で走っていたら虫に当たる    鏡原小 四年 与儀 直樹

夏休み宿題わすれてあそんでる     鏡原小 四年 伊計 雅史

夏休みラジオ体操はりきるぞ      鏡原小 四年 砂川 結那

台風で自分の教室水びたし       鏡原小 四年 平良 慎吾

クワガタはつのではさむよいたいよね  鏡原小 四年 嘉手苅 星羅

クワガタを取りにいったよ父さんと   鏡原小 四年 平良 恵美李

たたみの間風呼びこんで昼寝する    平良中 二年 伊良皆 翔

暑いねと言えば言うほど暑くなる 
   平良中 三年 下地 麻依

用もなく職員室に寄り涼む       平良中 三年 伊地 志織

日焼けして体がまるでしまうまだ    平良中 二年 大城 叶子

鏡見たいつの間にか日焼けした     平良中 二年 佐渡山 佳苗

夕焼けを見てはあなたを思い出す    平良中 二年 三原 和妃

クラゲがね雲みたいに泳いでる     平良中 二年 高江洲 莉紗

ゆったりと泳ぐ小さな金魚たち     平良中 二年 比嘉 小百合

家の中涼しい場所は父の場所      平良中 二年 福原 吟子

夕焼けの色にそまった空もよう     平良中 二年 古堅 貴山

ひまわりが光をあびて背伸びする    平良中 二年 洲鎌 春菜

夕立をながめるお前何を待つ
      平良中 二年 小川 貴之

台風は片付けしないで去っていく    平良中 二年 野原 克晃

夕焼けを見ている人の影ふたつ     平良中 二年 上里 詩織

熱帯夜一人夜空の星を見る       平良中 二年 長浜 彩也音

熱帯夜空からきこえる星の歌      平良中 二年 砂川 実賀子

涼風を必死にもとめ窓ぎわへ      平良中 二年 砂川 亮輔

夏の夜空見上げれば星の雨       平良中 二年 下地 智成

夏の海熱帯魚達の夢舞台       池間中 三年 小禄 裕樹

夏の海潮の香りと子守り歌        池間中 三年 浜元 功太

アサガオが一つ二つと花咲かす     池間中 三年 仲原 和希

場所さがし計画立てるキャンプかな   伊良部中 三年 福島 樹季

炎天下輝くあいつはカッコイイ     伊良部中 三年 儀間 美香

汗たらし睡魔と戦う今日このごろ    伊良部中 二年 前泊 江美

風鈴やはだしでかける芝の上      伊良部中 三年 久高 里奈

夏休み姉の帰省が待ち遠しい      伊良部中 三年 国仲 捺都美

さそり座の輝き増した夏の夜      翔南高 一年 仲間 美沙稀

バスケット夢がかなうなら夏乗り切れ  翔南高 一年 山城 充寿

夏の夜海に行ったら光る砂       翔南高 三年 平良 なつみ

風鈴が鳴る音聞いてねむる俺      翔南高 三年 宮国 昭徳

夏の海私を誘うざわざわと       翔南高 三年 池間 沙也加

ひまわりが今年も私の背をこした    翔南高 三年 桃原 美加

砂浜に足跡きざむ十六の夏       翔南高 三年 立津 恵里香

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。

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